• 企業

アサヒが味の素からカルピス買収で合意

 アサヒグループホールディングスと味の素は5月8日、東京・中央区のロイヤルパークホテルにて共同記者会見し、味の素の100%子会社であるカルピスの全株式をアサヒグループホールディングスが取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
 譲渡予定日は10月1日で、買収額は約1,200億円だが、カルピスから味の素への剰余金250億円強を含んでおり、アサヒの支払い額は900~1000億円になる見込み。

 味の素は1990年にカルピスの筆頭株主となり、2007年に100%子会社化する一方、2001年からアサヒとカルピスは自販機相互販売を開始し、2007年にはアサヒカルピスビバレッジを設立して自販機飲料の事業統合を図っていた。
 アサヒの飲料事業の売上規模は現在3,000億円台で、カルピスの2012年3月期の売上高1,074億円を合わせると4,000億円台に拡大し、市場シェアにおいてもコカコーラ、サントリーに次いで3位に浮上する見通しだ。
 味の素の伊藤雅俊社長は譲渡の背景について、これまでの相互の信頼関係とともに、「当社のコア事業に集中するという経営計画の実現、そしてカルピス社のさらなる長期的成長、この2つに合致すると判断した」と述べた。味の素は2011-13年度中期経営計画の中で、コア領域である調味料・食品と先端バイオ・ファイン関連に経営資源を集中し、事業の成長と構造強化を推進することで、確かなグローバルカンパニーを目指している。伊藤社長は「調味料と調味料を利用した加工食品の中では世界で一番になりたい。相当良い線を行っていると思っているが、グローバルジャイアンツに勝てる力を持ちたい」とした上で、「(グローバルで戦うために)資本効率や採算性の視点が非常に重要になってきている。われわれの目標のバーが上がり、得意分野に集中してより高い成果を生む」必要性が出てきたことがカルピス売却の背景にある。売却資金については、アライアンスやM&A、技術購入などを含め「グローバルに得意分野に集中して成長する、構造を強化するために資金を使っていきたい」という。
 なお、カルピス譲渡による味の素の今年度連結業績への影響は、売上高で480億円の減収を見込むが、営業利益、経常利益、当期利益への影響は軽微としている。

 一方、アサヒグループホールディングスの泉谷直木社長は、カルピス買収の理由について、経営理念が共通していることや従来の自販機事業における相互販売など信頼関係を上げた上で、さらに「カルピスという強いブランドは大変な魅力だ。その裏づけとなる差別化された乳酸菌の技術を基盤として、味の素と一緒に安定的名経営が行われている点も魅力だった。アサヒのブランドと組み合わせることによって、強いブランドポートフォリオが築けると判断した」と語った。「飲料のみならず、酒類や業務用商材、食品も含めて、国内外で協力して両社の企業価値を高めていけると確信している」という。