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健康・高齢化・環境にチャンスと花王・澤田社長
来春、特保「ヘルシア」からコーヒー市場に参入

 花王は11月7日、東京・千代田区のホテルニューオータニにおいて有力販売店との懇談会を開催し、それに先立って澤田道隆社長が記者会見を行った。
 澤田社長は「世界的には欧州の信用不安や米国の景気低迷に加えて、中国をはじめとする新興国の成長が鈍化しており、先行きはますます不透明になっている。日本においても国内産業の低迷によって景気回復の兆しはあまり見受けられず、デフレ化が続いているようで、非常に厳しい状態が続くのではないか」との見解を示した。こうした中、花王グループの方向性については、「グローバルで存在感のある会社を目指し、グローバルな拡大と社会的なテーマに積極的に取り組んでいく。グローバルな拡大に関しては、従来のプレミアム層をターゲットにしたビジネスの強化に加えて、伸び行く中間所得層、いわゆるボリューム層をターゲットにしたビジネスをスタートする。まずは中国、インドネシアから進める」と語った。
 今年8月に竣工した中国・安徽省合肥市のベビーおむつ工場は、予定通り生産を開始しており、年末から順次市場に投入していく。また、インドネシアでは家庭品の第2工場の建設に着工している。衣料用洗剤、生理用品などの生産能力強化とともに、将来的にベビー用紙おむつなどの事業拡大にも対応していく考えだ。
 一方、社会的テーマに関しては「健康、高齢化、環境というテーマに大きなビジネスチャンスがあると考えている。これを進めるに当たって、やはり新しい市場を創造する、また既存の市場を大きく活性化する商品サービスが重要だ。われわれの強みである研究開発力やケミカル事業とのシナジーを含めて、花王グループの強みをいかんなく発揮し、創造型商品の創出に取り組みたい」という。

 来期の具体的な戦略商品や施策について、まず注目されるのは「ヘルシア」ブランドだ。澤田社長は「2013年春に特保飲料でコーヒー市場に参入する。健康というテーマに関しては、すでにヘルシアブランドでメタボ予防を提案してきた。ヘルシアは摂取した脂肪だけではなく、身体に貯まった脂肪までエネルギーとして燃焼・消費する唯一の燃焼系の特保であり、他社の脂肪吸収抑制系の特保とはメカニズムが異なる。運動との併用が非常に効果を発揮する。こうした効果はポリフェノールの一種である茶カテキンによるものだが、当社の10年以上にわたるポリフェノール研究の結果、コーヒーに含まれるコーヒークロロゲン酸に高い有効性を見出した。コーヒーは、緑茶同様に非常に飲用頻度が高く、世界中で広く親しまれている。このコーヒー市場に参入することにより飲用機会を増やし、普段の生活に取り入れやすくすることで、消費者の健康により一層貢献していきたい」と強調した。この研究内容の一部については、11月11日から開催される国際コーヒー科学会議で発表するという。

 また、健康テーマに関しては、入浴剤「バブ」の炭酸ガスの技術や、この秋発売した「めぐりズム 蒸気でGood-Night」のように蒸気温熱の技術を使った血流改善、すなわち血めぐりに関する研究を重ねてきた。血めぐりだけではなく、神経系を介してリラックス機能に寄与することも研究の結果明らかにされてきている。澤田社長は「身体だけでなく、心と身体の両面にこうした技術が作用している。統合生理的な視点からこうした研究を進めており、血めぐりに関しては、統合生理研究をわれわれの今後の大きな柱として色々なかたちで健康に貢献していきたい」と語った上で、快眠や疲労につながる研究も進めていく考えを示した。

 環境テーマに関する商品としては、「アタック高活性バイオEX つめかえパック」を来年1月中旬にテスト販売し、4月末から全国で販売する。「当社は2009年に世界の先駆けとして超濃縮液体衣料用洗剤アタックNeoを発売し、コンパクトなメリットだけでなく節水・節電・時短を提案してきた。こうした活動が業界全体を牽引し、今では衣料用洗剤の20%強が超濃縮タイプに移行している。節水・節電・時短を含めると、環境に対する貢献として大きなインパクトを与えるに至っている。今回の提案は、まだ市場の約4割を占める粉末衣料用洗剤における環境に対する取り組みの一環だ。箱とスプーンを再利用することを前提に、容器の廃棄物量が約90%、CO2排出量を約60%低減することができる」という。
 このつめかえ用は、つめかえパックを箱に入れて、簡単に手で切ることができ、ユニバーサルデザインの発想も取り入れている。高齢者でも切りやすく、しかも手で持っているときには簡単に千切れない工夫や、袋を開けた際に粉舞いしない工夫がなされている。「特に、こうした環境やユニバーサルデザインを含めて、これからも積極的な提案を継続していきたい」と澤田社長。

 また、消費者とのコミュニケーションの強化として、「2013年度よりWebテクノロジーを駆使した新しい双方向でのコミュニケーションの場を構築し、消費者との新しい絆作りを進めていく。当社のファンを増やすと同時に、双方向コミュニケーションから出てくる消費者のすばらしい知恵や生の声を製品改良や新製品開発に役立てていければと思っている。双方向により当社商品の良さもご理解頂けるのではないかと考えている」という。
 澤田社長は「当社グループは、企業理念である花王ウェイの根幹をなす“よきモノづくり”を通して、世界の人々の喜びと満足ある豊かな生活文化を実現するとともに、社会ノサスティナビリティに貢献する使命をまっとうすべく、日々精進していく」と語り、会見を締めくくった。