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日本植物蛋白食品協会が技術セミナーを開催

 日本植物蛋白食品協会は11月30日、製粉会館で技術セミナーを開催した。同セミナーでは、日本医療栄養センターの井上正子所長が「植物たん白の生理機能と日本人の健康づくり」を、丸紅穀物部の白木友宏課長が「世界の大需給について」をテーマにそれぞれ講演した。
 セミナーの冒頭、同協会技術部会長、昭和産業の橋爪隆治油脂技術担当課長が「昨年度は東日本大震災の影響が心配されたが、前年比で伸びを示している。今年は、原料となる穀物の価格が高騰していることもあり、生産量などを伸ばしていくのは難しいが、普及活動につとめていきたい」と挨拶した。
 井上所長は講演の中で、江戸時代25~30歳であった平均寿命が戦後生活の変化に伴い急速に伸び、男女とも60歳を越えるようになったことを示し、近年の豊かな食生活とそれに伴うメタボリックシンドロームや生活習慣病などの問題について説明した。現在の動物性たん白、脂質に偏りがちな食生活を植物性に変えることが、内臓脂肪の増加やそれに伴う病の予防につながるという。
 白木課長はまず、近年の穀物相場上昇の原因として人口増加、経済成長、所得の上昇、都市化による需要の増加をあげた。近年の大豆相場の上昇については、現在世界の大豆輸入シェア3分の2を占める中国での増加が一つの大きな原因であるとし、2000年代初め約36%であった中国の大豆輸入依存度が、今季は約86%になったことを示した。1970年から2012年までの穀物需給の推移については「どちらも右肩上がりだが、天候などに左右される供給の値は不安定である。供給が不足する場合は在庫で補っており、その年の期末在庫率も穀物需給事情を知る上で重要な指標だ」と説明した。期末在庫率は17%以下を危険水準としているが、2000年代はタイトな状態が続いており、今年も18.9%となっている。また、1960年以降の世界の穀物の耕地面積・生産量・単収の変化についても「生産量・単収が3倍近くに増加しているのに対し、耕地面積は約6~7億haの間でほぼ変化がない。増加し続ける穀物需要は、生産効率を上げることで何とかまかなっている状況である」と説明した。2011年に70億を超えた世界人口はいまだに増加し続けており、穀物需要増加による供給不足が心配される。このほかにも、米国が行っている量的緩和政策(QE)による資金流入の影響についても説明し、2012年9月より実施され、2015年半ばまで続くとみられているQE3が、大豆など穀物価格に影響を与えていると説明した。