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かどや製油、業務用ゴマ油再値上げは様子見

 かどや製油は11月21日、都内で会見し、小澤二郎社長と佐野雅明専務が第2四半期決算後の事業環境について説明した。
 小澤二郎社長は上期の業績を受けて「軌道修正を早くかけたい」と述べながらも、競合他社の価格是正の追随の遅れや、ここへきての急激な円安振れに「どの時点でどう対応すれば良いのか、非常に苦しんでいる」と厳しい環境を表現した。
 「(11月7日の)IR説明会で想定した状況と、今はまったく違う世界になってしまった」と佐野専務。急激な円安により、描いていたシナリオが崩れた。2009~12年度には25~27億円余だった経常利益も15年3月期は原料コスト増などから前年比29%減の14億円にとどまる見通し。「14億円くらいの経常利益しか上げられない現状を見れば、値上げは避けて通れない」と強調する。
 かどや製油は、ゴマ油のトップメーカーとして、過去2年シェアを犠牲にしながら率先して必死に価格是正に理解を求めてきた。同社は大きな減益を強いられながらも黒字を確保しているが、同業他社のゴマ油事業は、原料コスト増に対して価格是正が大きく遅れ、多くが赤字になっていると見られる。「日本の和食を支えるゴマ油業界がこんなことで良いのか。業界を守れないことに対する非常に残念な気持ちを強く持っている。下を潜って安売りすれば良いという考え方が業界にある限り、良くならないのではないか。円安によりコストが上がることもあるが、まず自分たちの売り方に問題がある」とゴマ油の価値見直しを訴えた。

 業務用ゴマ油の販売については「6月1日に予定通り値上げを行った。その時点で、年内にもう1回値上げを行いたい希望をもっていた。しかし、競合他社はその前の3~4月に予定していたものを6月1日からと後追いの形で値上げを行った。ところが、実際の値上げは他社はほとんどできておらず、(すでに昨年から先行して上げていた)当社と他社の売値が拡がっただけだった。当社が値上げをしないから、(他社も)値上げができないという声が聞かれるが、これは当社の認識とまったく違う」と佐野専務は不満を隠さない。「これ以上の値上げは他社とは別世界の価格になる。余りにも他社との値差が大きく、当面様子見する。しかし、われわれが上げられるくらいの他社との値差になれば、直ちに上げたい気持ちはある」との考えを示した。
 年末に向けて業務用の足元の販売状況も極めて悪い。「レストランや宴会など外食需要がもの凄く悪い。ゴマ油のようにコストの高いものを減らす動きがある。しかし、悪いから年末に向かって安売りするという状況にもない。今、安売りすると流通在庫が増えるだけで、消費されない状態になっている。補充買いしかされないのに、値段を下げたら何の意味もない。11、12月は最大の需要期だが、業務用に強く打って出られず、特に卸店向けは最悪の状況だ」という。同社が得意とする中華料理、焼肉店など韓国系料理が非常に悪く、解散選挙で宴会需要も減少していると見られる。そのため、「売り上げが良くないので、値段を下げて刺激を加えたらという意見も営業現場から上がるが、今いたずらに値段を下げるのは得策ではないと思っている」と語った。

 一方、家庭用の「純正ごま油」は好調だ。「11月も絶好調で、対前年を遥かに超える数字が出ている。過去2年間、拡売費を削り、建値も13年10月に上げ、流通価格・特売価格を上げてきたことにより数量は落ちた。PBや調合油に流れていたのが、特に最近調合油や他社の純正の値段が上がり、当社との値差が縮まった。結果として10~12月に量販店からかなり引き合いがあり、前年を大きく上回る数字が見込める。市場シェアも14年2月を底に回復している」と佐野専務。今後の対応についても「特売の依頼には柔軟に対応していく。業務用と異なり、特売で売れたものは流通在庫ではなく家庭内在庫だから、売れている限りは(特売を)行う」方針だ。