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アメリカ穀物協会が「台頭するアジアの食料確保への日本の畜産業の役割」シンポジウムを開催

 アメリカ穀物協会は12月22日、ホテルオークラ東京において「台頭するアジアの食料確保への日本の畜産業の役割」と題したシンポジウムを開催した。同協会では、2040年の東アジアの食と農の未来に関する調査「Food 2040」報告や、2013年に発表した「台頭するアジア食料市場への日本の貢献」への提言を行ってきた。さらに今回、アジアの食料確保や日米両国、世界の食料安全保障への日本の畜産業の役割について、5名の専門家による検討を行い、新たに報告書と米国穀物業界への提言をまとめた。
 シンポジウムでは、米国大使館農務部のエリザベス・オウトリー主席農務官の開会挨拶に続き、この検討会で中心役を務めた東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教授が、検討内容の概要や自身の研究報告を含めて、基調講演を行った。その後、4名の検討会メンバーによる研究発表と、本間教授を座長にシンポジウムが開かれた。
 同報告書では、「日本およびアジア諸国の今後の畜産物消費・生産動向」(東京農業大学国際食料情報学部の堀田和彦教授)、「台頭するアジアの食糧事情 世界並びにアジアの牛肉事情と国産牛肉の輸出(ブリッジインターナショナルの高橋寛代表取締役)、「穀物調達を巡る環境」(丸紅経済研究所の美甘哲秀所長)、「2040年の日本:穀物輸入をめぐる4つのシナリオ」(宮城大学食産業学部の三石誠司教授)、「食料の安全保障と貿易の拡大」(東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教授)の5つのテーマをまとめている。

 本間教授は基調講演の中で「食料の安全保障は国際的視点が重要である。特に、飢餓人口を撲滅することについては、食料の安全保障をきちんと理解した上で、日本の食料安全保障を考える必要があるということである。食料自給率にこだわると、それ自体が目的化するジレンマに陥る。したがって、供給源の多様化を図っていく。それから、国内生産の基盤整備で農業の生産性を向上させ、輸出振興を図ることも食料安全保障の一環である。特に成長著しい、アジアの中間層をターゲットに、付加価値の高い畜産物、われわれの言葉で言う加工農産物の付加価値を高める、なおかつ輸出振興することである。最後に、日本の食品の評価として、味も品質も高い、ただし値段も高い。そこを下げるための技術を展開するためには、バイテクの活用や、米国との関係強化で農業振興を図ることが望ましい」との考えを示した。

 また、本間教授の基調講演につづいて、4名の検討会メンバーがそれぞれ報告概要について発表するとともに、パネリストや会場を交えた議論が行われ、シンポジウムの最後に、望まれる日本の畜産業の将来と日米の貿易関係や、下記の米国穀物業界への提言がまとめられた。
 日本の畜産業の将来と日米の貿易関係を構築するために、1)米国内インフラの持続的活用によるバルク穀物の高品質で安定した供給の継続、2)バルク輸送の船舶大規模化などによるさらなる輸送効率化によるコストダウン、3)リアルタイムでの穀物生産・生育状況の情報提供、4)バイオテクノロジーによる機能性付加穀物・食品の創生、5)トレーサビリティや個別の生産契約に基づく高付加価値穀物の委託生産市場の創生。