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不二製油が15年3月期決算説明会を開催  持株会社化への移行でグローバル経営に舵切る

 不二製油は5月13日、東京・港区の浜松町東京會舘で2015年3月期決算説明会を開催した。清水洋史社長は「不二製油は生まれ変わる。グローバル経営に大きく舵を切る」ことを会見冒頭に強調した。2015年3月期の決算概要については「売上高は2,719億円で昨年を189億円上回ったが、業績予想(14年11月7日公表の2,827億円)に対しては少し下回った。営業利益は142億円で前年に比べて10億円足りず、業績予想からも8億円下がった。ただし、当期純利益は93億円で前年を12億円、業績予想を3億円上回った」と報告した。油脂事業の営業利益はCBEを中心としたココアバター代用脂や欧米の加工油脂販売の好調等により業績予想・前年実績とも上回ったが、製菓・製パン素材事業、大豆たん白事業の営業利益は原料高の影響を受けて、業績予想・前年実績を下回ったかたちだ。

 同社は昨年より中期経営計画をローリング方式に変更した。中長期ビジョン「ありたい姿 2030(売上高5,000億円、営業利益率10%達成)」「あるべき姿 2020(同3,500億円、8%達成)」の実現に向けて、毎年成果と課題を検証しながら経営環境や事業投資の変化に対応して、向こう3年間の方針・戦略を策定することとした。今年新たに「ルネサンス不二2017」を発表した。日本市場における同社商品のコモディティ化や、海外の売上・利益比率の増加を受けて、「現状のままでは中長期ビジョンの達成が困難と予想される。中長期の目標は変えないが、やり方を変革していくことが今回の中心の課題」と説明した。
 その「ルネサンス不二2017」で最も大きな変革は、今年10月に予定する純粋持株会社化によるグループ本社制への移行だ。その背景のひとつに、ブラジル最大手の業務用チョコレートメーカーであるハラルド社の買収決定があった。「元々、来年から考えていたのだが、半年前倒して今年10月から行う。純粋持株会社とすることでグループ本社は戦略的機能を強化、エリア統括会社は権限移譲による意思決定を早めて、経営のスピードを早めていきたい。各エリアの統括会社に権限を移譲することで、各地域の事業運営の強化、地域に根ざしたマーケティング強化を進めたい」と清水社長。一方、日本市場で低迷している大豆たん白、乳化発酵事業については「収益性が低下している理由を分析し、事業戦略を見直し、事業再構築、収益構造改革をスピードアップする。営業力強化、マーケティング力の強化を行って、早く収益化を進めていく」と強調した。

 成長事業に経営資源を傾斜投入していくことが基本戦略だ。「まず第一に、(コンパウンドチョコレートは)グローバルで競争優位を確立できる。世界のトップ3になることを目指して、チョコレート用油脂(CBE)事業にコンパウンドチョコレート事業を加えたチョコレート戦略」を清水社長は挙げた。また、規模は小さいが大豆多糖類の事業は唯一無二の事業であり、「当社しかないからナンバー1というのもおかしいが、多糖類事業は早く大きくなっており、さらに世界化を進めていく」という。積極的な新拠点の設立やM&Aを進めながら構造改革を進める考えだ。大豆ルネサンスのUSS技術については「必ず柱にする」と育成に強い姿勢を示している。
 各事業の具体的な戦略について、まず油脂事業は、14年度営業利益53億円から17年度63億円以上、チョコレート事業については、14年度同57億円から17年85億円以上、乳化発酵事業は14年度同30億円から17年度40億円以上、大豆たん白事業では14年度同2億円から12億円以上としている。また、ルネサンス不二2017の3カ年では計400億円の設備投資を計画(M&Aは別枠)している。