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ライオンハイジーンが循環式浴槽向けレジオネラ対策の化学洗浄キットを発売

 ライオンの100%子会社で業務用洗浄剤等を販売するライオンハイジーンは、ライオン独自の活性化触媒技術を活用し、高い洗浄力と簡便性を両立した浴場施設の循環浴槽向けの配管用洗浄剤「レオシャイン 化学洗浄キット」を開発し、7月より販売を開始した。販売に先駆けて6月16日に東京・錦糸町の本社で記者会見を開催した。会見では、首都大学東京の矢野一好客員教授が「循環式浴槽施設におけるレジオネラ対策」をテーマに基調講演を行ったほか、新商品概要等を紹介した。
 レジオネラ属菌による細菌感染症の発見という意味では、1976年に米国・フィラデルフィアでレジオネラ肺炎が確認されたことに始まるが、日本で循環式浴槽水からの検出が問題になったのは1996年末のことで、それほど古い話ではない。一般的な循環式浴槽では、浴槽水をろ過装置に通し、加熱して再び浴槽に戻すという方式がとられている。矢野客員教授は、当時の循環式浴槽でも「一般細菌や大腸菌の基準を満たし、その2項目だけであれば飲めるくらいきれいになるということで、一斉に全国に広がった時期があった」が、「後でわかった話だが、ろ過装置の中にトラップされる有機物と、それを利用して増殖するアメーバ類をレジオネラは餌にして、ろ過装置の中で増えていたことがわかった。当時はろ過装置だけでレジオネラが増えることが問題になったが、そのろ過装置だけをきれいにしてもダメで、複雑な配管の中にヌメリやスライム状のバイオフィルムがこびりつき、その中でアメーバ類もそれを餌に増殖する。それをさらにレジオネラが求めて増殖する。配管系統もしっかり掃除しないと、レジオネラが選択的に増えると言ってよいくらい、数多く増えることが後にわかってきた」という。
 1999年に施行された感染症法により、レジオネラ症の患者数が集計されている。診療ガイドラインが策定され、検査キットが導入され、保険適用となった05年を境に患者報告数は大きく増えたが、その後もほぼ右肩上がりで増加し、2014年には1,236人に及んでいる。国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、今年も6月28日現在で594名(前年同週比19.0%増)の感染者が報告されている。
 矢野客員教授は「循環式浴槽設備のレジオネラ対策については、配管系統の徹底した掃除、物理的・化学的な掃除、そしてその後、塩素剤等での消毒を組み合わせれば、きれいになる。言い換えれば、配管系統の掃除と消毒がレジオネラ対策のポイント」であると強調した。

 循環式浴槽のレジオネラ症対策として、厚労省指針の中で「1年に1回以上過酸化水素洗浄等のバイオフィルム除去に有効な化学洗浄を行い消毒する」ことが挙げられている。配管内を洗浄し、バイオフィルムを分解・除去するためには主に2つの方法が用いられる。ひとつは過酸化水素法だが、劇物・危険物である過酸化水素水を扱うため、施工を専門業者に頼らざるを得ない。もうひとつのPC法は劇物・危険物ではない過炭酸ナトリウムと活性化触媒を用いる方法で、専門業者でなくても扱えるセット化された製品も市販されている。ただ、保護具の着用や混ぜてはいけないケースなど、専門知識がある程度必要なことや、セルフメンテナンスに対する心理的障壁は低くはない。
 ライオンハイジーンが販売開始した「レオシャイン 化学洗浄キット」は、浴場施設におけるレジオネラ感染症対策のための洗浄キットで、循環式浴槽の配管内を専門業者に依頼することなく、化学洗浄するためのセルフメンテナンスキットとなっている。わかりやすい洗浄マニュアルとともに5種類の薬剤が小分けで入っており、薬剤A~E(プレ洗浄剤、活性酸素剤、レオシャインP=活性化触媒、活性酸素中和剤、pH調整剤)を順番に使用する設計。このキット1セットで循環水量1トンに対応し、様々な大きさの浴槽に無駄なく使用することができる。過酸化水素単独では進まない化学反応のスピードを促進するため、独自の活性化触媒技術を採用したことも大きな特長だ。この触媒は過酸化水素を活性化して強力な酸化種を生成することで、高い漂白力に加え、高い除菌性能を発現できる。今まで落としにくかったバイオフィルムを強力に分解することができ、モデル実験では過酸化水素単独に比べて触媒を同時に活用することで汚れ分解速度を約5倍高められることが確認された。
 これまで、循環式浴槽の化学洗浄は、コストや洗浄効果、時間等を理由に定期的に実施するハードルが高かったことは否めない。専門業者に依頼した場合、専門スタッフが出張対応でくるため、1回の実施で30~40万円かかるケースが少なくない。「レオシャイン☆化学洗浄キット」を使用したセルフメンテナンスの場合、同社は「清掃回数を年2回に増やしても、年間10万円以上のコスト削減が可能になる」と試算しており、1年で100軒程度への販売を目標にする。