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第117回食用加工油脂技術研究会が開催

 一般財団法人全日本マーガリン協会が主催する食用加工油脂技術研究会は6月10日、東京・日本橋の油脂工業会館で第117回食用加工油脂技術研究会と平成28年度総会を開催した。同研究会は、食用加工油脂に関する知識の深掘りと加工技術の向上を目的に、食用加工油脂工業の管理者や若い技術者を対象とした技術講演会を年2回開催している。
 今回は、京都大学大学院農学研究科品質評価学分野の松村康生教授が「油脂含有食品の物性および安定性の制御」、東京大学大学院農学生命科学研究科の田之倉優教授が「NMRプロファイリングによる食品の総合評価」、日本女子大学名誉教授で神奈川工科大学の大越ひろ客員教授が「ユニバーサルデザインフードにおける食べ物のテクスチャー調整とその手法」について、それぞれ講演した。
 松村氏は、乳飲料の分散安定性に対するたんぱく質と乳化剤の影響や、油脂結晶が食品エマルションの安定性や物性に与える影響の中でも特にクリームの油脂結晶化による増粘・固化、固体脂の存在が脂肪球の気液界面への吸着挙動に与える影響、凍結溶解によるマヨネーズの不安定化について説明したほか、外部粒子添加によるショートニングの物性改良を解説した。
 田之倉氏は、NMRによる非破壊測定により、食品中の様々な有機化合物を同時に検出・定量できることや、分子間の相互作用に関する情報を得られること、また、選択励起・BBWETの手法を用いることで、食品中の微量成分の情報が得られることを説明した。食品の品種鑑別等に食品中の微量成分に由来するNMRスペクトルの利用が有効とした。
 大越氏は、UDFの視点から、テクスチャーを調整する方法について、根菜類や肉加工品、マッシュポテトを事例に紹介した。テクスチャー調整において、物性値はひとつの指標になり得るが、物性値は品質管理に役立つものの、製品開発の場合には官能評価による食べやすさの評価も必要との見方を示した。また、安全な食べ物のテクスチャーを考える場合、食べる前の段階のテクスチャーのみでなく、咀嚼過程における食塊のテクスチャーの変化も重要とした。