• 団体

第121回食用加工油脂技術研究会が開催

 (一財)全日本マーガリン協会主催の食用加工油脂技術研究会は6月8日、東京・日本橋の油脂工業会館で第121回食用加工油脂技術研究会および平成30年度総会を開催した。
 今回は、理研ビタミンの行田和樹氏が「乳化剤を中心とした冷凍食品の品質改良について」、元・文教大学健康栄養学部教授の肥後温子氏が「マイクロ波加熱が食品に与える影響」、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の本山三知代氏が「脂肪の化学構造と結晶状態のラマン分光解析」と題してそれぞれ講演した。
 行田氏は、食品用乳化剤の一種であるプロピレングリコール脂肪酸エステル(PGエステル)の冷凍食品に対する品質劣化抑制効果について解説した。PGエステルは親油性乳化剤だが、ホワイトソースに水相側から添加することで、PGエステルとでん粉の複合体が形成され、でん粉が保護されることにより冷凍劣化を抑えられるという。また、PGエステルが氷結晶の再結晶化を抑制する作用については、PGエステルは氷結晶表面に可逆的に吸着し、また特定の吸着面を持たずに吸着していることが作用機序になっていると説明した。同社の「リケカラット®」などPGエステルなどを組み合わせた製剤についても紹介した。
 肥後氏は、マイクロ波加熱の原理と昇温特性、でん粉性食品の効果現象、たん白練り生地の膨化現象について説明した。レンジ調理する食品の含水率が低いほど昇温が早いことや、塩分濃度が高い場合に内部の昇温温度が遅くなる事例を紹介した。また、パンの再加熱や、小麦粉練り生地を加熱した事例を挙げた上で、膨化や硬化は水の状態変化に起因することを解説した。マイクロ波加熱では、低含水領域で結合水が乖離して、自由水が増加し、でん粉が糊化して、さらに水分蒸散量が増加するという一連の変化が起きると推察されるという。
 本山氏は、振動分光法のひとつであるラマン分光法を用いることで、ヨウ素価や飽和・不飽和度といった脂肪の化学構造や、結晶状態について、試料中の水の妨害を受けることなく、非破壊的に調べることができることを紹介した。結晶状態の解析を応用することにより、例えば、豚肉由来の脂肪を面倒なサンプル調整不要で牛や鶏の脂と判別して簡易に検出でき、ハラル対応技術としても有効だという。ただし、やや測定に時間がかかることや、スペクトル解析についてさらなる高速化が必要であるといった課題も挙げた。