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2019年度花王グループ方針説明会で示された目指す姿と方向性
変化とESGの2つをポイントに改革推進

 花王は、流通の取引先に向けて新製品紹介や売場提案を行う「花王コラボレーションフェア2018秋」の開催にあたり、11月28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで「2019年度花王グループ方針説明会」を実施した。
 説明会では、はじめに澤田道隆社長が変化とESGの2つをポイントに目指す姿や方針について語った。同社は「自ら変わり、そして変化を先導する企業へ」をスローガンに現中期経営計画「K20」を進めている。澤田社長は、自ら変わるにはグループのメンバーだけでなく「経営が自ら手本を示すことが重要」と述べた上で、取締役会や経営会議においても改革を断行していることを紹介した。取締役会の活性化のため定員を7名にコンパクトにしたり、議長を社外取締役が担うようにしているという。また、経営会議の判断のスピードを上げるため、権限委譲以外にも、これまでは1人でも反対するとしなかったことを、1人でも賛成がいればその人に任せたり、会議のあり方もプレゼンは短く端的にして議論の時間を多く取るように改善している。
 さらに「研究資産の活用において大幅な変更を行うことにした」と切り出し、同説明会の前日に開いた技術イノベーション発表会の模様(本号74頁参照)を紹介した。「主要な技術5つをオープンにした。これは研究資産の活用という意味で、これまでとまったく違う方針」と強調した上で、「自前主義的な価値提案だけでは限界があり、皆さんと一緒に考えていきたいということで、オープンイノベーションの形で提案した。販売店、異業種、産官学と連携しながら色々な出口を探っていきたい。これが必ずや社会にお役立ちができる価値提案に結びつくと考えている。7月にESG部門を作ったが、それが具現化できるように、リンクさせていきたい」と語った。
 また、ESGが社会の潮流となり、非財務的な取り組みが重視される中で「これまでCSRやサステナビリティ推進に取り組んできたが、組織の第1階層にESG部門を作って活動を始めたところだ。ポイントは3つある。ひとつは攻めのESG。これまでは利益を得たお金を使って社会に貢献しようというスタンスだったが、今後は長期的な企業価値に資する投資と考えて、コストから投資へ攻めのESGを行う。もうひとつは、グローバルな取り組み。今回は米国人を統括に据えた。第1階層で日本人以外というのは花王グループで初めてになる。3つめは、花王らしい活動。清潔・美・健康、そしてインテグリティが似合う会社だと思っているので、“きれいを、こころに。未来に。”というキーメッセージをベースにESG活動を本格化させていく」と語った。社会環境、事業環境の変化が激しく、そのスピードも速いため、「消費者ニーズの多様化、エシカル志向、価値のパーソナライズ化、One to One価値の提案にどう対応できるかが今後の勝ち負けを左右するかもしれない。販売店と、技術イノベーションを核とする花王グループが共創できれば、その対応はより強くなると思っている」と述べ、コラボレーション関係の強化を呼びかけた。

 続いて登壇した吉田勝彦専務は「ここ数年、激しい変化の中で、規模の大きさやパワーゲームだけではもう生き残れない実感を非常に強く感じている」と述べた上で、1)変化も進んできた(昨年の振り返りも含めて)、2)デジタル化で変わる人の価値観の定着、3)今後のキーはスマホからAI、4)変化対応はイノベーション、という4つのテーマについて話した。また、花王グループカスタマーマーケティングの竹内俊昭社長は「持続的な成長のためには、新しい発想や指標をもって市場を活性化し続ける必要がある」と述べ、1)カスタマーリレーションシップの共創、2)化粧品の新しい販売戦略、消費増税による駆け込み需要への対応について説明した。