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選び選ばれる関係強化するNSファーファ・ジャパン

 NSファーファ・ジャパンは12月4日、同本社で2019年度上期(3~8月)新商品発表会を開催した。
 会見では、はじめに里村治社長が今期の反省と来期の経営戦略について説明した。2016年に社長に就任して2年半、「基本的に卸売りは尊重はするが、NBメーカーとしては生き残れないので、NBという捉え方を一切概念から外した。新商品の発売時期も春と秋に出すこの業界の常識から外れたことをしているし、北海道から沖縄まで全部並べるのがNBという捉え方に反して、経営している」と語る。ここが既存の卸売流通を中心とするメーカーとの違いで、「NB的に売っていきたいものは小売業のルールがあるので春・秋に間に合うようにするが、それ以外についてはカタログに載せる必要もないし、出したいときに出し、売りたいときに売ってもらえたらよいと考えている」という。
 社会や住環境が変わる中で、消費者の洗濯に対する考え方も変わってきているのではないかと同社は考え、1万人を対象に洗濯に関する50ほどの質問を行う洗濯好きクラスター調査も今年7月の実施で3回目を数えた。ミーハー、洗濯好き、家族優先、マイチョイス、利便・倹約、環境重視、香りネガティブ、無関心という8つのクラスターを切り口にし、「それぞれに合わせたモノづくりをした方が売れるのではないか。したがって特売から降りた。マスマーケットへは行かず、違う切り口で行くというのが当社の生き方」と、就任以来一貫した方針で商品開発はもちろんやマーケティング、チャネル戦略を進めている。
 例えば、香水をイメージした香りと上質な肌心地のプレミアム柔軟剤「ファーファ ファインフレグランス」は、洗濯好きに向けたラインで、同社の売り上げ構成比で断トツの一番になるまで販売を伸ばし、圧倒的な利益を生むブランドに育っている。洗濯好きなクラスターに向けしっかりと作り込んだ商品価値が受け入れられており、後発商品が出て高級柔軟剤セグメントが盛り上がる中、テレビCMなしに輝きを放っている唯一のブランドと言ってよいだろう。「最初に出した自負でモノに自信はある。洗濯好きの人は10%ほどしかいないが、その人たちの市場金額に対する貢献は約2割ある。家には2、3種類の香りの商品を持っていて、洗剤も様々持っている。そういう見方をできるようになった」という。
 一方、マイチョイス層をターゲットにした「ファーファ ココロ」は、現代の洗濯に必要な性能に特化し、デザインを含めて、できる限りシンプルさを追求して衣料用洗剤・柔軟剤等を展開している。DINKS世帯のように都市部で共働きでちょっとしたマンションに住み、週末は友人を呼んでパーティを開いたりする人が、生活臭を感じさせないものを好むのを狙い、「リピート率が約45~50%ある。香りも自然で中身(の性能等)もパッケージで謳っていない」。
 「ファーファ ファインフレグランス」は本体600mlで700円台(税別)、「ファーファ ココロ」は本体500mlで600円(税別)で販売されている。「ファーファ ココロ」は2017年1月に発売した比較的新しい商品で、売り上げは「ファーファ ファインフレグランス」の1/10もないが、利益商品になっている。「新しく出した商品で赤字の商品はひとつもない」という。
 今年10月には、無香料・無添加コンセプトの「ファーファ フリー&」(衣料用洗剤・柔軟剤)を香りネガティブ層に向けて販売し始めた。「ある小売業でテスト販売をしており、環境系や自然派系を求める人にどれだけ受け入れられるか追跡調査をしている」段階にある。
 里村社長は「こういう商品を我々自身の価値観の中で出して、昨年度下期に黒字転換し、今年度上期も完全に黒字になり、利益転換を∨字回復している、生き方を変えて漸く一人前で飯を食べていけると自信を持った。来期の戦略については一切変えない。各クラスターに合わせた商品の進化を行う。したがって、あれもこれもとは考えていない」と述べた上で、2019年度春の新商品として、「ファーファファインフレグランス」柔軟剤と同じ香りの超コンパクト液体洗剤「ファーファ ファインフレグランス ウォッシュ」<オム/ボーテ>や、「ファーファ ファインフレグランス」の新香調<アムール>、そしてeコマース市場から一部店舗での展開を経て「ファーファ ココロ」のパッケージをリニューアルし、本格的に販売していくことを発表した。

 同社はこうした戦略を推進する中で、生産体系も変えた。「我々はいわば混ぜ屋なので、大きい釜で混ぜて、大量に作って大量に売るのがだいたいこの商売の基本なのだが、当社は大きい釜はもう基本的に使わない。小さい釜で必要な分だけ作って必要な分だけ供給することにしたので、こういうものが作れる」ことこそ、この戦略に欠かせないという。戦い方を変えて、成果を出し、利益を取れる体質に変わった原動力はここにもある。
 また、チャネル戦略もはっきりいわゆるマス商品とは異なる。「営業員20数名では北海道から沖縄までカバーできない。そう考えると、こういう商品を買ってもらえる消費者がどこに住んでいるのかとなると、だいたい首都圏や阪神圏。そこに集中特化した営業体制にするべきだろうし、こういう商品を買いたいと思うお客様がいる小売業とと組んでいる。猫も杓子もがするから乱売が起きる。大手ドラッグチェーンすべてにNBを並べたら乱売になり、安売りが出るのを我々はコントロールできない。全部が全部というのは無理だから、一生懸命取り組んでもらえる、選び選ばれの関係を築ける小売業と一緒になってやっている。今更囲い込もうなんて夢にも思わないし、シェアを10%取ろうとも思わない。中小であっても、1人当たりの幸福をより大きく社員に対して出せる、そういう会社の方が生き残っていけると思うし、社員も幸せなのではないかと思っている」という。店舗や地域のカバー率のようなことには固執せず、競合を追い落とすマーェティングをするつもりはさらさらない。「新しい市場を創造するかたちにマーケット戦略をすべて切り替えたので、競争はしない。結果的に似たような商品は出てくるが、それは当社のような捉え方で出してくるわけではなく、バックボーンが違う」というように、ひとつひとつ丁寧なモノづくりに自信を持っている。
 ただ,そうは言っても同社の生産数量の面で要になっているのは柔軟剤の「ファーファ トリップ」で、「家族優先クラスターの商品で、この商品も特売から降りたので赤字ではないが、儲かるわけではない」といった事情はある。しかし、かわいいクマのキャラクター“ファーファ”が同社の知名度を高めてきたことを考えると「2019年度にはさらに若年層を中心に“ファーファ”の強化をしていきたい。“ファーファ”が将来、何かしらNSファーファと若い世代を繋げていく架け橋になるのではないかと考えている」と語った。