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日本水産油脂協会が第72回水産油脂資源講演会を開催

 日本水産油脂協会は8月21日、東京・渋谷のアイビーホール青学会館にて「令和2年度(第72回)水産油脂資源講演会」を開催した。新型コロナウイルス感染拡大の影響でイベント等の中止が相次ぐ中、感染対策を十分に行った上での開催となった。冒頭、日本水産油脂協会の平田芳明理事長から開会挨拶が述べられた後、各登壇者による講演が開始された。

 まず初めに、国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所 浮魚資源部の西田 宏部長が、「マイワシの資源動向及び管理目標案について」と題し、講演を行った。
 太平洋マイワシの回遊は、主に5~7月の北上回遊と10~12月の南下回遊があり、それぞれ魚の年齢によっても経路が異なる。また、資源量には高水準期と低水準期が存在し、長期的な気候変動において、相対的に水温が低い年代に高水準になると考えられている。高水準期には産卵海域が広域に広がり、道東海域まで形成される。
 資源量については、太平洋マイワシの漁獲量は2002~2010年は10万トンを下回る水準であったが、2011年以降は増加しており、2019年の国内漁獲量は52万トンだった。近年は、加入量(新たに資源に加わった0歳魚の尾数)が増加傾向にあり、特に2018年生まれが多くみられた。2020年5月までに生まれた0歳魚は、723兆粒と2019年を下回った。一方で、未成魚としての漁獲は、北陸~豊後水道南部、駿河湾、相模湾西部、房総海域など複数の海域において昨年を上回った。また、沖合域の調査では、5~6月の移行域の幼魚調査に基づく資源量指数は昨年を上回る漁獲がみられている。こうした情報から、現時点では2020年級群の加入量は前年並み、もしくはそれを上回る水準だと予測されるという。
 管理目標案に関しては、まず前提として、親魚量を一定量以上に維持し、加入量を確保することが重要である。2018年に成立した漁業法(一部改正)では、最大持続生産量(MSY)を実現するために維持し、または回復させるべき目標となる値(目標管理基準値)を定めることが示されている。漁獲によって魚を適度に間引いたとき、中間的な密度において平均的に最大の漁獲量が得られる水準を「MSY水準」と呼び、そのときの親魚の資源量が「目標管理基準値」となる。そのため、マイワシについても、MSYの考え方に沿った目標の提示が求められた。
 管理目標案を考える上で、再生産関係について考慮する必要があるという。再生産関係とは、親魚が増加した際に、その子どもがどの程度の割合で増えるかという量的な関係のことだ。2018年生まれの加入は良好であったものの、高加入期に突入したとまでは断言できず、通常加入期の再生産関係においてMSYが得られる漁獲の強さや親魚量について推察。その結果、MSY36万8,000トン、目標管理基準値案109万7,000トン、限界管理基準値案47万1,000トン、禁漁水準案6万6,000トンに設定した。
 全体として、資源量は増加傾向にあり、特に加入量の多かった2018年生まれの年級群に、今後の漁獲が支えられることが期待できる。また、親魚量としてのMSYも水準以上で、漁獲圧もMSYを実現する水準にあると考えられる。ただし、今回設定した管理目標案については、今年度の資源評価結果により更新していく方針だという。