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花王が菌やウイルスを不活化する手指バリア機能を発見

 花王は12月14日、手指が本来備えているバリア機能に関する研究成果についてのオンライン説明会を実施した。
 冒頭、パーソナルヘルスケア研究所の柳澤友樹所長が、今回の研究の背景について「“衛生”を花王の新しい価値軸とするという方針のもと、2017年7月、パーソナルヘルスケア研究所内に『衛生プロジェクト』を立ち上げた。迫りくる感染症とその不安から、生活者の皆さまを守れるような花王ならではの提案ができないかと集められた組織。われわれの仕事の特徴は日常生活の感染現象に目を向けるというもの。新しい切り口の研究を行い、それを通じてより自然に効果的に感染のリスクを減らす方法を考えたいと思い取り組んでいる」と述べ、感染経路に着目した研究活動を中心に行っていることを明かした。
 続いて、同研究所の眞鍋憲二グループリーダーが、研究成果についての詳細な報告を行った。
 今回、花王が解明したのは、人の手指には生来、感染症の原因となる菌やウイルスを減少させる機能、つまりバリア機能が備わっており、風邪やインフルエンザのかかりやすさに関連している、という内容だ。また、手指のバリア機能には個人差があることや、このバリア機能には手汗から分泌される乳酸が寄与していることも発見した。
 研究ではまず、感染症にかかりにくい意識のある人とかかりやすい意識のある人数名を選別し、手指に大腸菌を塗布して、直後と3分後の手指の菌の状態を調べた。その結果、かかりにくい意識のある人の手指では、3分後に菌が大幅に減少していることがわかった。次に、6名の人の手指表面の成分を採取して、抗菌・抗ウイルス活性(菌やウイルスを減少させる効果)を評価したところ、手指表面の成分には、大腸菌だけでなく、黄色ブドウ球菌やインフルエンザウイルスを減少させる効果があることが確認できた。また、この効果には個人差があり、いずれの菌・ウイルスに対しても高い効果を持つ人や、その逆の人がいることが判明した。これらの結果から、人の手指には菌やウイルスを減少させる機能が備わっており、その機能には個人差があり、その機能が恒常的に高い人がいるとの着想を得た。この機能を「手指バリア」と名付け、さらに研究を深めていった。