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ADEKAが新中計「STEP 3000」を発表 
食品は海外展開加速と質的転換図る

 ADEKAは5月29日、東京・荒川区の同本社において2012年3月期の決算説明会を開催するとともに、2012~14年度の中期経営計画「STEP3000」について説明した。
 12年3月期の連結業績は、売上高1,708億1,700万円(前年比4.1%減)、営業利益83億4,200万円(同42.8%減)、経常利益86億2,800万円(同40.0%減)、当期純利益37億9,700万円(同45.1%)。国内7工場のうち4工場が東日本大震災の影響を受け、減収・減益となった。櫻井邦彦社長は「生産体制は2~3カ月で戻ったが、営業シェアが戻るのに時間がかかった。また、欧州の債務問題や中国経済の減速、タイの洪水、円高の影響を大きく受け、厳しい業績となった。その中で、戦略24製品の拡販や鹿島電解・塩ビモノモノマーといった鹿島コンビナートの共同出資会社から撤退を決め、選択と集中を進め、収益構造の改善を図るとともに、UAEへの進出や国内外新プラントの立ち上げなど将来の成長に向けた基盤の整備を進めた」と総括した。

 セグメント別の業績は、情報・電子は増収・微減益だったが、機能化学品、基礎化学品、食品はいずれも減収・減益となった。特に、食品は鹿島工場の被災による影響が大きく、櫻井社長は「製造停止したことにより販売数量が減少した。前年まで業界シェア22~23%でNo.1を自負していたが、(昨年)4月の時点の出荷量は40%程度に落ち込んだ。バター風味豊かなマーガリンや素材風味を引き立たせるマーガリンなど特徴ある製品の販売強化により、期後半にはシェアが概ね回復したが原材料価格の高止まりの影響などを受け、収益を押し下げた」と語った。

 新たにスタートした12~14年度の中期経営計画「STEP 3000」は、同社が創業100周年を迎える2016年度に売上高3,000億円のグッドカンパニーとなるため、確たる手段を打つ期間として位置づけ策定したものだ。海外、技術、価値創造、投資、人財の5つを基本方針とし、2014年度に連結売上高2,400億円、営業利益170億円をめざす。そのための成長戦略として「新製品の創出と海外事業の拡大の2つが重要なポイント」と櫻井社長。現在29%の海外売上高比率を14年度に40%とすることを目標に掲げた。また、ライフサイエンス、環境エネルギーに特に注力して新規事業を創出するとともに、固有の基盤技術とコア技術の融合を図って競争力の高い製品を開発して新製品の売上高比率30%(単体)をめざす。09~11年度に240億円に抑制した投資も、2012~14年度は600億円に拡大する。このうち約400億円を設備投資(海外約60%)、M&A投資枠として約200億円を計画している。

 特に食品事業について櫻井社長は「少子高齢化で内需は伸びないということで、海外進出型への転換を図る。その安定収益基盤をより強固なものとする下地作りを行う。東西における安定供給体制の構築に向けてアライアンスを進める」という。また、「加工油脂製品の拡大も大事だが、第3の柱として新機能分野を加え、食品事業の質的転換を図りたい」との考えを示した。
 2014年度の連結売上高目標2,400億円のうち、食品の構成比は現在と変わらず29%の維持を目標に掲げている。つまり前期の約500億円から約700億円へ拡大する計画だ。拡大に向け、海外展開を加速し、事業領域の拡大に取り組む。「艾迪科食品(常熟)は、今年で6年目になるが、昨年ワンライン増設し、数量的には計画通りに進んでいる。原料が高く、製品価格が低いため中国の利益は今、厳しいが、OEMも出てきており、ネームバリューも認知されてきた。中国をさらに拡大するというのが第一で、さらに東南アジアでの販促強化を考えている。それはインドや中東への足掛かりにもなる」という。また、安定供給体制の構築に向けたアライアンスについて、次期社長に内定している郡常務は「当社は精製拠点を東にしか持っておらず、必然的に西の方に何らかのお力添えを頂くか、あるいは協力関係を結ぶことを考えている」と語った。