• 油脂のトピックス

ヒマシ油

 ヒマシ油は、主にインドで栽培されるヒマ(トウゴマの一種)の種子(ヒマシ)を絞って生産される植物油である。ヒマシは約42%の油分を含んでいる。
 かつては、ブラジル、中国、インドがヒマシの3大生産地と呼ばれ、この3カ国で世界の取引量の70%強を占めていた時代があった。
 しかしながら、ブラジルおよび中国のヒマシ生産量は1980年代から90年代にかけて半減し、両国は輸出国としての地位から脱落した。その結果、今やインド一国の供給に世界の需要が集中することになった。
 以前は、わが国でも種子を中国から輸入して搾油が行われていたが、中国の輸出停止に伴い、1994年に搾油がストップした。その年より、インドからの原油の輸入に切り替わった。
 現在、世界のヒマシ油生産量(年間約60万トン)における、インドの割合は約7割である。同国のヒマシ生産量は、年間80~120万トンで推移している。主産地は西部のグジャラート州で、インド全体の生産量の70~80%を占めている。
 近年は、大手メーカーによってセバシン酸の生産も開始されており、付加価値の高い誘導体に力を入れている。
 この数年の大きな動きとしては、ヒマシ油価格の高騰が挙げられる。ヒマシ油の国際的な指標となるロッテルダム相場は、2011年2月に史上最高のCIF2,850ドルに達した。ヒマシ油の需給のタイト感が強まっており、その後も2,000ドル台が定着している。現在の価格は、2000~06年の700~1,000ドルと比べると約3~4倍の水準である。
 ヒマシ油の価格は、この5年間で一段階ずつ相場が上昇しており、現在では1,000ドル以下の水準に戻る可能性は極めて低い。
 この高騰の要因としては、一言で言えば需要が供給を上回っているということである。ヒマシ油の需要が世界的に伸び続けており、インドだけに頼るのは限界になりつつある。
 中でも中国の輸入量が顕著に伸びている。同国のヒマシ油輸入量は、セバシン酸などの需要が好調であることから、この数年で大幅に増加している。同国のヒマシ油輸入量は5年前までは約6万トンであったが、2010年には、約17万トンに達した。年々、世界最大の輸入国として影響力を強めている。
 わが国のヒマシ油輸入量は、年間約1万5,000トンから2万トンで安定的に推移している。
 近年では、ヒマシ油は植物性のエコな原料として注目を集めている。特にウレタン関係では、環境面が評価され、堅調に推移している。
 これまでの相場から一段以上高いレベルに切り上がっており、ヒマシ油メーカー各社は付加価値品の開拓に力を入れている。また、原料の安定供給のために、インド以外の産地から原料確保を進める動きもある。

ロッテルダム相場推移表
(単位:ドル/トン)
20002001200220032004200520062007200820092010
1月1,0307316539379531,0508501,1151,4401,4311,563
2月1,0107446501,0239831,0258631,1261,5041,3251,538
3月1,0167256591,0351,0301,0378871,1681,6191,2131,547
4月1,0517147081,1351,0641,0358881,2451,6551,2541,653
5月1,0606917431,0999911,0299001,3001,6691,2651,731
6月1,0086537181,0199531,0209051,2751,6581,2501,780
7月9346737159719841,0149131,2751,7601,2601,838
8月8767137458861,0749799281,2841,8701,3351,853
9月8207107888331,1249519711,2831,7531,3901,973
10月8017017878441,1299011,0461,3031,6371,3901,963
11月7846908048791,1258631,1321,3241,5741,4781,958
12月7706638259261,0698541,1381,3851,5831,5261,970
平均9307017339661,0409809521,2571,6441,343 1,781
(資料:オイルワールド誌)