• 油脂のトピックス

パーム核油

 パーム油がアブラヤシの果肉部から得られる油脂であるのに対し、パーム核油はその内果皮の中の核から得られる。脂肪酸組成は、パルミチン酸を主成分とするパーム油とは異なり、ラウリン酸を50%前後含むほか、多くが飽和脂肪酸によって構成されている。そのため、ヤシ油に似た特性がある。
 パーム核油の生産量は、2010/11年度には550万トン近くに達した。約20年前には100万トンにも届かなかったが、パーム農園の拡大とともに拡大を続けている。ヤシ油の生産量が当時から大きな変化がないのに対し、パーム核油の増加がラウリン系油脂の需要拡大を支えてきたといえる。主な生産国はパーム油と同様であり、2010/11年度の生産量は、インドネシアが約250万トン、マレーシアが約200万トンと、両国で80%以上を占める状況もまたパーム油と同じである。
 一方、消費量はマレーシアが群を抜いて多く、2009、2010年の消費量は140万トン前後で、インドネシアやEUの2倍以上を占めていることになる。近年、EUの需要は60万トン前後でほぼ横ばいだが、マレーシアはもとよりインドネシア、中国を含め、東アジア圏のオレオケミカル需要が増加しており、それらの国のパーム核油消費量は増加傾向にある。
 パーム核油の用途は、食用ではヤシ油同様にラクトアイスやホイップクリーム、コーヒークリーム、チョコレート用油脂などに用いられている。ただ、近年においてはエステル交換や分別技術が進み、それらの技術を駆使したパーム油の利用も増えている。もっとも、ラウリン系油脂の価格がパーム油を大きく上回るようになっていることも、パーム油の利用を促す要因のひとつとなっている。パーム核ステアリンは、安価なチョコレート用油脂として利用されるが、2010年後半以降、高値推移していることから需要が鈍るといった現象もみられている。
 マレーシアやインドネシアの農園大手は、農園経営や搾油のみならず、製品分野への投資も活発化させている。脂肪酸やアルコールといったオレオケミカル分野もそのひとつで、マレーシアやインドネシア、中国におけるオレオケミカル設備の拡充が、東アジア圏における需要拡大につれて進んでいる。パーム核油生産の双肩を担うマレーシアのオレオケミカル設備の拡大にしたがって、東マレーシアからの移送やインドネシアからのパーム核油輸入も増えている。生産量の少ないヤシ油の方が、パーム核油よりも通常、高値をつけやすいが、時として需給バランスが崩れ、パーム核油価格がヤシ油価格を上回る場面も生じている。
 わが国のパーム核油輸入量は、2010年には猛暑による氷菓需要の伸びもあり8万トンを上回ったが、10年前との比較では70%近い伸びを示している。なお、2010年のパーム核油の消費実績については、農水省によると、マーガリン類やショートニングが約1万トン、その他加工用が約2万3,000トン、非食用が約5万トンと推計されている。

日本のパーム核油輸入量
(単位:トン)
2000年50,688
2001年49,982
2002年50,206
2003年51,101
2004年50,784
2005年54,161
2006年54,372
2007年73,396
2008年67,438
2009年70,126
2010年84,159
(資料:財務省「日本貿易統計」)