• 油脂のトピックス

アマニ油

 アマニは古代より栽培されていたことが知られ、その茎の繊維で織ったリネンは衣料等に広く利用されてきた。フランス語ではランと呼ばれ、ランジェリー(下着)の語源にもなっている。また、その種子油は東洋の仏画などに古くから用いられたことがわかっている。なお、繊維作物のアマと油糧作物のアマは、背丈や枝分かれなど品種が異なる。
 アマニは、日本へは薬用利用を目的に江戸時代に渡来した説が有力であり、明治時代の北海道開拓期から繊維を採取する目的で栽培されたが、その後、繊維原料は化学繊維に取って替わられるようになった。そのため現在、日本では一部の食用目的を除いてほとんど栽培されていない。
 アマニは主要油糧と比べて生産量が少なく、産地の天候等によって年毎にバラつきはあるが、世界のアマニ生産量は概ね年間200~250万トン程度となっている。このうち200万トン弱が搾油され60万トン前後のアマニ油が生産されている。
 アマニの国別の生産量は、カナダが最も多く、平年で100万トン程度、次いで中国が40万トン後半となっており、そのほか年間10万トンに達するのは米国、インド、エチオピア、ロシア(ウクライナ含む)、EUといった国・地域に過ぎない。EUは、2000年頃まで30~50万トンを生産する年もあったが、農政改革によりアマニ生産のメリットが薄れた結果、作付面積を大きく落とした。その一方で、ロシアやウクライナといった地域が徐々に生産量を伸ばし、欧州の需要の一部をまかなっている。
 しかし、世界のアマニ輸出量の7割以上をカナダが占めているように、輸出余力を持つ国は少ない。そのため、カナダの作柄しだいによって価格変動が大きくなりやすいという点は否めない。
 アマニ油はヨウ素価の高い乾性油であり、その脂肪酸組成はリノレン酸含有量が60%程度と他の油脂に比べて高いことが特徴となっている。アマニ油は酸化や重合が進みやすく、通常、サラダ油やフライ油用途には適さないが、乾性油として塗料や印刷インキなどに幅広く利用されている。ただし、n-3系の必須脂肪酸であるα-リノレン酸を豊富に含むため、保存安定性を担保できる調合油や小容量で食用に使われることはある。
 わが国のアマニ油需要もその多くが塗料やインキなど工業用途となっている。1990年代には年間約3万トンの需要があったが、新聞向けのインキ原料を中心に大豆油への置き換えが進んだこともあり、アマニ油の需要は段階的に減少してきた。また、搾油中心だった供給形態もそれにあわせて変化し、2000年以降、搾油が減少し、輸入アマニ油の利用が増えた。現在は、搾油によるアマニ油生産よりもアマニ油輸入量の方が多くなっている。
 2009年には、リーマン・ショックの余波により工業製品の需要が落ち込んだことや、GM混入問題の煽りを受けてα-リノレン酸強化目的で使用されていた飼料向けのアマニ油需要の多くを失っており、国内需要は1万トンを下回る水準となっている。


わが国のアマニ油生産と輸入量
(単位:トン)
原料処理量油生産量輸入量
200153,94621,320617
200238,33715,2133,980
200321,2568,26314,172
200418,8027,27412,160
200518,2507,07911,012
200615,4855,59710,113
200713,6725,19810,315
200811,6134,6547,923
20094,9541,9405,662
20105,7252,2925,598
(資料:農水省「油糧生産実績」、財務省「貿易統計」)