• 油脂のトピックス

落花生油

 落花生油は、8大油脂の一つであり、世界的には年間約400万トンの需要があるが、わが国では約900~1,100トンの小さな市場に留まっている。
 2010年のわが国の輸入量は565トン、生産量は344トン、合計909トンで、過去5年の平均に比べて2割ほど減少している。
 落花生油は、業務用が大部分を占めており、家庭用は、ほとんど流通していない。
 業務用では、中華料理の炒め油に使用したり、ラーメン店では、スープに入れたり、味噌に混ぜ込んで使用している。その他、中華まんや月餅の練り込み用途もあるが、以前に比べて大幅に減少している。
 家庭用は、以前は大手メーカーによる新製品投入で活気が出た時期もあったが、定着せずに終わった。
 落花生油本来の香りを活かした商品として、芳香落花生油がある。これは、グレードの高い豆を絞った香味が豊かな油で、そのままだと香りが強すぎるので精製油とブレンドされる。
 独特の香りを活かして、フランス料理やイタリア料理のソースなどにも使用されているが、香りが強いので限られた用途にしか使えず、年間数十トン程度の規模に留まっている。
 落花生油の需要は、この2、3年は陰りがみられるものの、長年にわたって概ね安定している。景気の低迷で業務用市場は厳しさを増しているが、他の油脂では代替できないため、根強い固定需要に支えられているといえるだろう。
 原料面では、輸入油と国産品(搾油)があるが、輸入油が半分以上を占めている。油の輸入先は、数年前までは中国が最も多かったが、中国国内の油脂価格高騰により、シンガポールにシフトしており、07年からはシンガポールが輸入のトップに代わっている。
 さらに、近年はベトナムからも輸入され、シンガポール、中国、ベトナムの3つの地域を中心に分散して調達される形になっている。シンガポールやベトナムも中国から原料を仕入れており、中国の国内需給がタイトになると、両国からの供給が低下する。近年、中国は、落花生油の輸入量を増やしており(08年0.5万トン→09年2万トン→10年6.8万トン)、同国の動向を注視する必要があるだろう。
 なお、以前は、中国、シンガポールに加えて米国からの輸入も相当な量があったが、現在はごく僅かな量しか輸入されていない。
 国産品については、国産落花生の“クズ実”と、規格外となった食用の輸入豆が使用されている。割合としては、輸入豆の方がかなり多くなっている。国内の落花生生産は、この10年間で半減しており、搾油原料の発生に対して、ある程度影響を与えていると推察される。
 落花生の油分は、おおよそ37~38%で、精製すると歩留まりは32~33%になる。落花生を搾った粕は、肥料用中心に利用されている。


 わが国の落花生・落花生油の供給量
          (単位:トン)
_________________________________________
     落花生     落花生油      
     生産量    国産  輸入   合計 
_________________________________________
2000  26,400    504   609   1,113
2001  26,700    482   873   1,355
2002  23,100    488   745   1,233
2003  24,000    528   658   1,186
2004  22,000    444   769   1,213
2005  21,300    481   790   1,271
2006  21,400    580   688   1,268
2007  20,000    557   629   1,186
2008  19,400    332   712   1,044
2009  20,300    334   450   784
2010  16,200    344   565   909
_________________________________________
(資料:農水省、財務省)