竹本油脂亀岩工場FSSC22000認証授与式
「さらに安心・安全なものを消費者に届けたい」と牧野執行役員
posted on : 2012.06.29
竹本油脂は今年4月、基幹工場である亀岩工場でFSSC22000認証を取得した。その認証機関であるテュフ ラインランド ジャパン(以下テュフ社)のテクノロジーセンター(横浜市都筑区)において6月28日、認証書授与式が行われ、テュフ社のクリスティアン・ヴァイディンガー執行役員から、竹本油脂の牧野龍夫執行役員に認証書が授与された。同時に認証取得の意義や食品の安心・安全の管理体制について記者会見を行った。
FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、国際食品安全イニシアチブ(GFSI)が昨年承認した最新の国際標準の食品マネジメント規格。ISO22000に、厳密な衛生管理基準やフードディフェンス等についての追加要求事項であるISO/TS22002-1(PAS220)を加えた、より厳しい認証スキームといえる。
竹本油脂の牧野龍夫執行役員は「当社の創業は1725年で今年で287年目を迎えた。出発はナタネ等を搾った灯明油だが、明治に入り灯明油が廃れ、付加価値が高く健康にも良いゴマ油作りに展開を図った。現在は、ゴマ油だけでなく、繊維関係の化学品や建築関係のコンクリート用混和剤も作っている。売上の6割が繊維関係の工業用になっており、ゴマ油は2割だが、油で出発したこともあり家業は油と考えている。煤が出ない灯明油を作るといった技術志向は創業時からあり、その伝統は今日まで受け継がれている」と同社の歴史を紹介した。
食品に対する消費者の目が厳しくなる中で、同社の食品安全の取り組みについては「不祥事を起こさない体制作りが大事だと、食品メーカーとして痛切に感じている。FSSC22000取得に入る前から、当社は安全安心なものを消費者に届ける意識を強く持ってきた。原料のゴマ(搾油用)は多くをアフリカ諸国からの輸入に頼っているが、当社では全船積みロットについて農薬を公的な第三者機関によって、国の基準に準じたかたちですべて分析にかけている。アフラトキシンも分析している。安全が確認されたものだけを国内に入れて使用しており、業界内でも最も厳しい基準を設けて管理していると自負している。今後さらに、安全で安心なものを消費者に届ける、あるいは工場で働く人々にとっても安心で安全なもの作りにおける環境が大事だ。それを維持し、さらに発展させるために、独自で行ってきたことだけでは不足だったであろう部分を色々と指摘を受け改善し、FSSC22000の取得に向かった。そうして取り組んだシステムやマネジメントが評価され、認証を受けたことは大変喜ばしく、かつ誇りに思う。今後もFSSC22000を維持し、さらに安心・安全なものを消費者に届けたい」と語った。
竹本油脂はゴマ油事業関連で7~8年前にISO9001認証を日本の審査機関で取得したことがある。しかし、運用面で使いにくい部分が出てきたこともあり、1年ほどで返上したという。その後、独自で品質管理を行ってきたが、3年前からISO22000認証の取得の検討を始めた。2009年の春頃から社内で勉強会を始め、同8月から本格的に認証取得に着手した。その中で、昨年春頃に、より厳密な管理体制を目指してFSSC22000認証の取得へと方針転換を図った。
「ゴマ油は輸出も行っており、特に米国の流通などでFSSC22000認証がなければ取引をしないというところも出てきている」と牧野氏は語る。国内市場は少子高齢化が進み、現在は、ゴマ油売上の約1割という米国やカナダ中心の輸出展開を将来的に拡大していくことも視野に入れている。
FSSC22000認証の取得に際しては、時間をかけてハード的な面から品質管理の改善に取り組んだ。指揮を執った小川彰執行役員は「工場内に監視カメラをつけたり、ゴマ油の配合ラインに異物混入対策のフィルターがあるが、これも2重3重にフィルターを増やした。分析機械では、ガスクロマトグラフィの機材が約350万円かかるが、古くなったものを更新した。防虫・防鼠対策でもハード面の改良に数百万円をかけた。費用は3年間で1,000万円を軽く超えた」と語った。
ただ、要求事項にあるように、工場内の仕事の流れをしっかり確認して、どこに問題があるかをチェックすることで、今まで見落としていたような細かな弱点は非常にクリアにできた。「そうした洗い出しをしたことにより、作業に対する現場の意識が変わったことが最大の成果ともいえる。準備期間から3年かかったが、会社としても一体感が生まれた」という。
亀岩工場では現在、ゴマ油製品を製造する新工場を建設中で、生産規模を年間5,000トン以上に拡張し、来年春の完工を予定している。新工場にも取得の範囲を拡大し、FSSC22000対応ができるとしている。
食品においては、命に関わる安心・安全はもちろん、表示のミス等を含めたチェック体制の充実が欠かせない。「マネジメントシステムの中で、チェック体制の検証の部分を作るのに最も力を注いだ。どのように行えば漏れのない検証ができるか、時間をかけて作った」という。
テュフ社の監査員である岡田綾子氏は「(FSSC22000の認証取得にあたり)職人気質という面もあって、CCP(重要管理点)を導入せず、OPRP(オペレーション前提条件プログラム)で対応するといった頑固なポリシーも持たれていた。独自に試行錯誤しながらも、しっかりとしたシステムを作られた。効果的に運用して、さらなる食品安全を進めてもらえると思う」と語った。