味の素中間決算は、減収も純利益は過去最高
posted on : 2012.11.06
味の素は11月5日、同本社において中間決算説明記者会見を開催した。中間期の連結業績は、売上高5,988億6,000万円(前期比0.9%減)、営業利益368億8,700万円(同13.4%減)、経常利益392億5,700万円(同11.0%減)、四半期純利益411億600万円(同59.8%増)となった。減収となるも、厚生年金基金の代行返上益を特別利益として277億円計上したため。純利益は中間期過去最高となった。
セグメント別では、国内食品が調味料・加工食品や冷凍食品の売上げが伸びたが昨年抑制された販管費が反動で増え増収減益。マヨネーズの売上げは堅調に推移した。海外食品は為替の影響もあって売上高はほぼ横ばいを確保したが減益、バイオ・ファイン事業事業は減収増益となった。医薬事業については、提携販売品の薬価改定や競合品の影響などから減収減益。提携事業の油脂については、販売数量は前期並みながら販売価格が下がったこと等により減収になった。
通期予想の売上高1兆2,210億円(前期比2.0%増)、営業利益735億円(同1.3%増)、経常利益765億円(同0.8%増)については前回発表同様に据え置いた。純利益については、厚生年金基金代行返上益を計上する一方、医薬事業などの構造改革費用150億円のマイナスなどを加味し、前回予想から30億円増の470億円(同12.6%)としている。
伊藤雅俊社長は今後の展望について、R&Dのリーダーシップとグローバル成長の2つを成長ドライバーとして育成していく考えを示した。「R&Dについては、当社は調味料を世界一の技術にし、そして調味料の製造技術でもある先端バイオにも注力する。調味料で言えば、呈味、香気、そしてそれらを制御する技術。一方先端バイオについては、低資源利用発酵技術など食糧と競合しない原料を使うホワイトバイオ、動植物あるいは水産物の生産性や質を向上させるグリーンバイオ、そして次世代の医薬、医療や栄養改善の分野であるファイン・ライフサイエンスの分野に集中し、さらに外の技術も取り込んで(オープン&リンクイノベーション)仕事をしていく」と語った。
ホワイトバイオ関連では、「5月に発表したが、ブリヂストン社とタイヤの原料であるゴムを当社の植物発酵技術で作り出すことで、共同で仕事を開始している。イソプレンというゴムの主成分を発酵で作り出し、そこからブリヂストン社がタイヤを作るということで、2013年度に事業化判断することを目標にしている」という。
また、ファイン・ライフサイエンス関連では、血液中のアミノ酸で健康状態や疾病リスクを明らかにする技術「アミノインデックス」の活用を進めている。今年5月には、花王と健康ソリューションビジネスにおいて事業提携を行ったほか、内臓脂肪型肥満の判別可能性を確認し学会発表するなど、来年度以降の事業基盤強化や事業拡大に向け着々と計画を進めている。
国内家庭用製品でもR&Dのリーダーシップを具現化し、「鍋キューブ」や「Cook Do きょうの大皿」といった新商品を今秋発売している。「鍋キューブ」は固形の鍋つゆだが、液体の鍋つゆを単純に乾燥固化しただけでは、おいしさや使いやすさは得られない。独自素材を活用し、先味のふくらみと後味に広がるコクと厚みを実現したことに加え、少量での複雑で強い味わいが出せる独自素材を活用したり、キューブ製造に適した原料の選定・配合を行うことで、小さく溶けやすいキューブ状に成形している。「Cook Do きょうの大皿<塩鶏じゃが用>」は、根菜柔らか成分を配合することにより、フライパンで10分煮込むだけで、煮汁をしみ込みやすく、ホクホクな食感になるよう工夫している。
グローバル成長については、うまみ調味料ではバングラデシュのドンギ工場(12年5月稼動)に加え、ナイジェリアのアパパ工場増築とコートジボワール工場新設を来年3月に完工を予定している。風味調味料では、ペルーのカヤオ工場に新食品製造棟(12年4月稼動)、加工食品では同じくカヤオ工場で即席麺ライン増設(12年10月完工)を図った。こうした主力商品の増産だけでなく、次世代中核商品の育成も積極的に進めている。ベトナムでは粉末メニューとして「Aji-ngon」のベジタリアン用や「Aji-Quick」の鍋用、スープ用を、インドネシアでは「Mayumi」や「Aji-Mayo mild sweet」といったマヨネーズ調味料を、ペルーでは「Aji-no-men」「Yakissoba」といった麺類を今年新製品としてそれぞれ発売した。
海外コンシューマーフーズ事業の売上高は、既存国で前年比10%増の1,840億円、新市場で同24%増の210億円と今年度2,000億円を超える計画を立てている。
冷凍食品事業の事業構造強化にも取り組んでいる。低価格競争とは一線を画し、付加価値向上と価値に見合った価格を訴求し、販管費を抑制を進めた。今上半期の冷凍食品事業の業績は、リーマンショックや中国製冷凍餃子中毒事件以前の2008年度と比べると、売上高は98%の1,117億円だが、売上利益は111%に改善しており、営業利益については215%の74億円で業界水準を大きく上回っている。主力工場である関東工場第一棟の建て替えに7月に着工し(2014年9月完工)、主力製品の生産集約化を図る。また、洪水被害を受けたタイ工場については、生産ラインを再構築しており、12年11月中旬に生産を再開する。生産品目を主力製品に特化(23品目→2品目)し、高生産・高収益性を実現していく。
そのほか、低資源利用発酵技術の導入も世界各地で着々と進行中で、2010年対比で2013年度に50億円、2014年に75億円の利益貢献を計画している。また、資料用アミノ酸事業の構造強化に向けて新たな用途開発にも取り組んでいる。そのひとつが2011年に米国で販売を開始した乳牛用リジン「AjiPro-L」の拡販だ。乳量を向上する機能があり、2013年第1四半期に生産を倍増する計画だ。