かどや製油が業界紙と懇談会を開催
輸出とゴマセサミンに明るい展望
posted on : 2012.11.20
かどや製油は11月16日、油脂・食品業界紙記者と懇談会を開催し、中間期の状況などについて報告した。
小澤二郎社長の挨拶につづいて、4~9月の営業概況について佐野雅明取締役常務執行役員販売推進部長が説明した。
まず、家庭用については「特にNB商品は好調に推移した。競合他社の調合油との値差を縮めようと積極的な拡販策をとった結果としてのプラスだった。ところが副次的な効果で、当社自身が受託しているPBまで影響を受け、(前年対比で)100を切ってしまった。PBが落ちてNBが上がるという結果になった」と語った。PBは同社が受託している以外にも全般的に減少しており、大手流通では200gで値頃感のある価格設定ができず、150g容量に全面的に切り替えるといった動きも出ている。
一方、業務用は「数量は102%でまずまず順調だった。昨年は、食べるラー油が急激に伸びた反動で落ち、焼肉店さん向けも非常に厳しかったが、立ち直りの傾向が出てきている。昨年の秋口から今年春先にかけて原料価格はやや軟化し、業務用ゴマ油価格も若干下がっているので、売り上げは100を下回った」という。
上期は天候要因にも振り回された。春先から7月半ばまでは比較的涼しく、冷やし中華を食べる適当な気候の時期が短かった。タレにはゴマ油や練りゴマが使われるが、これらの需要が減少した。また、9月半ばになると例年、冬場商品向けの原料が動き始める。しかし、今年は真夏の気候が10月頭までつづき、例年9月に納入するものの何割かが10月にズレ込んだ。夏物、冬物ともに不調という気候に恵まれない期だった。また、焼肉店にしても、大手チェーンは売り上げが対前年で2桁増と回復する傾向がみられるが、単独店の状況は依然として厳しい。
一方、ゴマ油の輸出に明るい展望が開けてきている。「数量・金額とも対前年108で、輸出は非常に好調だ。米国やカナダといった北米は引き続き順調。さらに、昨秋ドイツのANUGA(世界最大級の食品見本市)へ出展し、欧州向けも数量がまとまってきた。今年度は米国の業務用展示会(IFT12)に出たが、来年は中東やシンガポールへ出展して、さらに輸出を拡大していきたい。この2年間は円高が進んで輸出の商売は厳しい面もあったが、原料はドル建てであり、輸出時もドルで出すのだから割り切って考えるしかないということで、安定した価格で出してきた。それが奏功して、現地のお客様のサポートもあって販売が伸びている。この基調を堅持しながら、販売地域を増やしていきたい」という。
通販事業の拡大にも注力している。2010年に発売した「かどやのごまセサミン」の定期購入コース加入者は毎月順調に増加しており、既存品の「黒ごま&オリゴ」と合わせて通販事業をゴマ油・食品ゴマに続く第3の柱に育成していく方針だ。「通販事業の実績は、売り上げとしては小さいが、対前年で180%の金額になっている。この水準でさらに何年間か伸ばしたい。事業全体に与える影響でいえば、輸出は過去数年間7~8%の水準だった。今年度は輸出と通販の合計で初めて売り上げの10%を超えることができている。重点施策であるこの2つが育ちつつあることは、明るい話題と捉えている」と佐野常務は強調した。
また、原料環境については「今夏の米国の干ばつにつられるように原料ゴマも高騰した。一時は1,550~1,600ドル/トンまで上がった。その後、中国の買い付けに焦点が移ったが、今のところ静かな模様だ。ただ、買っていないわけではなく、前年を上回る数量を買うと見ている。二大生産国である中国・インドとも今期の生産はあまり良くなく、インドが加工用のゴマをアフリカから買い付けたという話もあった。ナイジェリアをはじめとするアフリカの生産は比較的安定した状況で、中国がよほどトリッキーな動きをしない限りは、現状の1,400~1,600ドルのボックス圏を予想するが、逆にいえば、昨年や一昨年のように1,200ドルに落ちることはないと見ている」という。過去2年の1,200~1,300ドルと比べて原料コストは上がっており、現状のボックス圏を突き抜けるようになれば価格是正に向けた動きが出てくる可能性はある。「1,600~1,700ドルになってくると、ゴマ油も食品ゴマも販売価格の見直しを考えなければならない。今すぐ値上げという方針はまだできていないが、過去数年に比べて、楽な環境にはない」のが実情だ。