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不二製油が第2回大豆ルネサンス発表会を開催  
濃厚感やうま味効果に優れる豆乳クリームを3社が採用

 不二製油は4月12日、東京・港区のコンラッド東京で「第2回大豆ルネサンス記者発表会」を開催した。同社独自の大豆の新分離分画技術(USS製法)により作られる豆乳クリームは相模屋食料、内堀醸造、コールド・ストーン・クリーマリー・ジャパンでの採用が決まり、同社の大豆事業の中長期戦略「大豆ルネサンス」のもと展開するUSS素材の販売も順調なスタートを切った。

 発表会の冒頭、不二製油の清水洋史社長は「昨年10月に、大豆は世界を救うということで、第1回大豆ルネサンス記者発表会を行った。技術の不二として、中核となる技術はUSS製法=Ultra Soy Separationと説明したところ、非常に多くの反響を得た。6カ月間、アプリケーション、メニュー等、一番おいしい食べ方について研究、試作をしてきた。世界で初めてできた豆乳の生クリーム、脂肪のない豆乳というところに技術のポイントがある。口でいえばそうだが、最終の具体的な商品となるとメニュー開発が重要になる。2つのアイテムだが、ローファット豆乳=脂肪のない豆乳は実はソールドアウトになっており、4月の初めの発売前から買い手が決まっていた。商品の特長からいうと、豆乳クリームも非常に優れており、出汁のような特長がある。現在はソールドアウトの状態だが、設備を大きくして皆さんにお届けしたい」と語った。
 また、USS製法の設備は現状年間1,500トン、3億円程度の売り上げ規模を予定しており、初年度のマーケティングはユーザーを限定する状況となっている。「2016年あたりに新しいラインを2系列化にしていきたい。さらに5年くらい後には新設備も作っていきたい。日本人だけのものではないので、どこに設備を作るのが一番いいのかということも、今後1年かけて考えたい」と清水社長は将来的な海外展開にも意欲を示した。

 続いて、同社の佐本将彦蛋白素材開発室長が「USS製法の開発とその可能性について」プレゼンテーションを行った。豆乳クリームの味の特長として、官能評価でも明確に確認されているのは「うま味の増強効果」で、乳の生クリームはそれ自体に濃厚な風味はあるが、こうした効果は弱い。そのため、単に生クリームの置き換えというより、独特の効果的な利用法に期待できる素材といえる。

 実際に豆乳クリームを採用した3社の代表者から、採用に至った経緯や、商品開発、事業の将来性などについても紹介された。
 相模屋食料は、豆乳クリームを配合した「豆乳入り よせとうふ」の発売を6月下旬に予定している。同社の鳥越淳司社長は「豆乳クリームが入ったことによって、圧倒的なコクとうま味、甘み、味わい深い濃厚感を楽しんでもらえる。さらに、とろりとした食感も豆乳クリームを使ったときの特徴的なものではないかと考えている」と語った。同社は今後のすべての新規の商品について、豆乳クリームの採用を検討していきたいとしている。
 内堀醸造は、東京駅ナカで酢カフェ「飲む酢エキスプレ・ス・東京」を展開しており、3月22日からイチゴ酢の豆乳割りの提供を始めた。牛乳の持つボディ感への評価も高いことから、「トロミのある濃い豆乳を選択し、メニューに加えようとしたが、大豆の個性的な香りが前に出すぎた」(内堀光康副社長)ため、従来の豆乳では商品開発が難しかった。そんな矢先に出会ったのが豆乳クリームだ。イチゴ酢の豆乳割りに対する消費者の反応も「酸味や風味を損なうことなく楽しめた」という回答が得られ、酢と豆乳の組み合わせにも大変満足した人が大半だったという。内堀社長は、「豆乳クリームには、おいしい、健康を背景にした五感を満足させる魅力がある」と強調した。

 アイスクリーム店チェーンを展開するコールド・ストーン・クリーマリー・ジャパンの米津一郎マーケティングディレクターは「素材として扱いやすく、風味もクリーミーでおいしい、少量でも非常に風味豊かな味が出せる素晴らしい素材に出会えた」と豆乳クリームを高く評価した。豆乳クリームを使った「豆乳&アサイー ジェラート」の発売を6月14日に予定している。豆乳クリームとともに新しい市場を開拓し、長い目で見た場合に豆乳カテゴリーをアイスクリーム市場で確立していきたいと意欲を示した。

 また、豆乳クリームや低脂肪豆乳を使ったレシピ開発を行っている料理研究家の松村佳子氏と、日本料理界の重鎮で菊乃井店主の村田吉弘氏が登壇し、USS素材の価値や将来性についても紹介された。
 菊乃井の村田氏は開口一番「この豆乳クリームに初めて出会ったときに、これで世界に行けると思った」と絶賛。「日本料理に足りないものは、(風味に)リッチな感じがない。菊乃井では白和えの中にフロマージュブランを入れたりしているが、(豆乳クリームを使うことで)恐らくもうしなくていいようになる。日本料理は西洋や米国に出て行っているが、豆乳クリームがあることによって、彼らの味覚に非常にマッチしやすい。生クリームやバターと違って、素材をマスキングしない点が非常に良い」と語った。菊乃井が百貨店などで展開する物販店でも、相模屋食料とコラボレーションして菊乃井の豆腐を販売することを計画している。