GROWTH10フェーズⅡ最終年度で事業構造改革の完遂目指す日清オイリオグループ
posted on : 2013.05.19
日清オイリオグループは5月16日、同本社において2013年3月期決算説明会を開催した。
今村隆郎社長は当期の連結業績について「売上高は3,099億8,100万円となり前年比0.8%の減収となった。単独の売り上げは前年を上回ったが、海外の加工油脂事業が前年に比べて減少した。利益面においては、国内の油脂・油糧事業において適正な販売価格の実現に取り組むとともにコスト削減に努めたが、原材料コストの上昇分がそれ以上に大きかったことと、海外では加工油脂事業の利益がパーム油環境の急激な変化や新たなのれん償却も加わったことも大きく影響し、営業利益は42億2,700万円、経常利益は44億7,100万円、当期純利益は15億800万円、それぞれ前年に比べ28.4%、17.1%、60.7%の減少となった」と報告した。
一方、2014年3月期の業績予想については「今期はGROWTH10フェーズⅡの最終年度として節目の年でもある。しかし、事業環境は依然厳しい状況が続いている。原料コストは構造的な高止まりに加え、昨年末からの円安の流れにより大幅に増加している。為替の影響のみで昨年と比較して約130億円を超える影響が出ると見込んでいる。デフレ状況を脱したといえないマーケットの中で、この原料コスト上昇分を販売単価にいかに反映させていくか、加えて高付加価値商品の拡販への注力、さらに徹底的なコスト圧縮などを行い、この難局を乗り越えて行く」との考えを示した上で、連結業績予想は売上高3,400億円、営業利益67億円、経常利益60億円、当期純利益27億円とした。
2007年にスタートした「GROWTH10」では、2009年度に経常利益100億円を計上したものの、その後の利益水準は年々下がっている。今村社長は「このような状況になったのは、根幹の事業である油脂・油糧事業の収益力低下、第2の収益の柱として期待していた加工油脂事業の伸び悩みなどが挙げられる。安定的な収益を継続的に確保できるよう事業構造の改革を早急に実行していかなければならない」と述べ、2013年度の主要課題として、1)油脂・油糧事業の収益力強化、2)ISF社の事業構造改革、3)中国事業の事業構造改革、4)ヘルシーフーズ事業の事業構造改革、5)ファインケミカル事業の継続的な成長、6)生産・物流の全体最適化と徹底したローコスト体制への変革、7)事業環境に相応しい業務、コスト要因・組織構造の再構築、8)財務体質強化・B/S(バランスシート)の圧縮、9)グループ企業の統廃合・再編を挙げた。
特に、最重要テーマである油脂・油糧事業の収益基盤の強化については、レギュラー油・キャノーラ油といった基幹カテゴリーの収益改善に待ったなしで取り組み、販売価格適正化への継続やコスト構造の見直しを含めて推進していく。また現在好調なプレミアム油、オリーブ油、ゴマ油など収益商品の拡販、新商品の投入、メニュー提案、他社とのコラボの推進などによって収益を高めていく考えだ。
生産・物流の全体最適化などへの変革については「生産供給体制の再構築によるコスト競争力の獲得も大きな課題だ。TPP、FTA等、関税ゼロ化への流れを含め、搾油環境の変化に対応できる輸入油併用型供給体制の確立を急がねばならない。すでに横浜磯子工場における輸入オイルの対応強化への着手、抽出ラインの圧抽兼用化については磯子工場ではすでに完了、水島工場でも9月の完成予定となっている。また、最適な、かつ柔軟性のある供給体制の実現と、物流・在庫コストの最小化を目指した横浜磯子事業場の再構築への投資も施策としている。これらの課題、取り組みを強力に推進し、ローコスト体制への変革を通じて、当社基幹事業を強固なものにしたい」と語った。
一方、加工油脂事業の中核を担うISF社は、カカオバター相場の下落や夏場などの動きにより、チョコレート代用脂需要の低迷、インドネシアの関税税制変更による精製マージンの悪化など厳しい状況が続いている。しかし、「これらを打破していかなければ、ISF社の収益安定化すなわち加工油脂事業の安定化は望めない。本年4月にはパーム事業に関わるISF社およびT&C社を含めたアジアにおけるR&Dの中心拠点として位置づけられたグローバルR&Dセンターを現地に設置した。現在は法人組織をマレーシアに立ち上げる準備を行っているが、生産地・消費地に近い地点で効率的に商品を開発するための技術開発を担い、生産・販売・開発が一体となったスピード感のある事業展開を行っていく。技術力・品質力に裏付けられた体制の下で、アジア各国へのスペシャリティファットの販売の多様化、顧客拡大による安定的な収益構造の実現を目指す」という。
また、中国事業の構造改革も断行しなければならない。「収益が低迷している大連日清、上海日清、投資公司について抜本的な見直し、再構築が必要だ。中国事業は今まで自前での事業展開を行ってきたが、今後は当社の持っている油脂に関わる技術をオープンにし、パートナーと組んで技術を事業に変える取り組みも積極的に行っていきたい。中国国内における食用油および健康食品等について、中国国営企業(COFCOのグループ企業である中国糧油)と提携について協議を始めることととした。今後提携が実現した場合、中国市場において、新たな市場創造型ビジネスが構築でき、国際的な事業グループへ飛躍するための布石になると考えている」と今村社長。
また、2014年度からは新たな中期経営計画をスタートさせる。「GROWTH10のスタート時に描いた成長のイメージは、国内製油事業の収益を今後成長が見込める分野に投入し、さらなる成長の柱となる事業の柱を育成し、成長を実現するというものだった。しかし現状は、製油の収益基盤が悪化し、成長事業への投資の制約要因になっており、また成長事業は成長への展望が見えてくる新たなビジネスモデルが描かれていないという状況だ」。大豆などの原料相場はGROTH10の構想段階の2005~06年当時から大きく上昇し、国内の大豆搾油量についてもスタート時点より約60%の数量となるなど、製油産業を取り巻く環境はこの間大きく変化している。
「ここでもう一度、当社グループの置かれている環境、そして今後の未来予想を綿密に行い、改めて当社の進むべき方向、あるべき姿を考えるべきだと判断した。GROWTH10は、フェーズⅡで一端終了し、2014年度からは新たな中期経営計画をスタートさせる。本年度は、事業構造改革の完遂と新中期経営計画の策定、すなわちGROWTH10の総括と現状を俯瞰分析し、未来予想等を加えて当社グループの成長を再提起し、新たに目指すべき姿を作り上げていく予定だ。製油産業の厳しい構造変化が急速に進む中で、今年度は当社にとって大きなターニングポイントになると考えている」と今村社長は語った。