洋菓子「生パウンド」に流行の兆し
生乳感や口溶けの良いクリームを不二製油が展開
posted on : 2014.02.13
不二製油は2月5日、東京・港区の同社東京支社において、洋菓子のトレンドと同社が13年度から展開を始めた最高品質の生クリーム「CLASS-F4545」に関する説明会を開催した。
冒頭挨拶を行った中村修専務は「世の中はアベノミクス等でかなり良いような話になっているが、実は食べ物は全般的に苦戦している。中でも特に、洋菓子は低迷の度合いも非常に深い。チャネルによって良し悪し、凸凹はあるが、全体的に苦戦を強いられている。当社としては、何とかこの業界、特に街の洋菓子屋さんを活気づけられないかと考え、生パウンドを紹介している。その流れを全国ベースに広げたい」と語った。
過去20年のスイーツのトレンドを振り返ると、1990年代のベルギーワッフル、ティラミス、クレメダンジュ、マンゴープリン、シフォンケーキ、クイニーアマン、2000年代のアジアンスイーツ、黒ゴマデザート、バームクーヘン、ロールケーキ、マカロン、ラスクなどが注目されてきた。これらのスイーツは日本になかったものだが、2010年以降、現在は新規のスイーツを流行させるのが極めて難しい時代になっている。しかし、そうした中でも「朝食系のアイテムやパンケーキ、ロールケーキは注目されており、これら3つには共通点が存在する」と同社企画統括室の清原祐子主事はみている。フレンチトーストやワッフル、エッグベネディクトといった朝食系アイテムは、世界中のセレブが食べることから話題になった。パンケーキは行列のできる人気店も出現している。ロールケーキは最盛期に比べるとやや陰りが見られるものの、1日20~30本を販売するような店もあり、ロングセラー商品といえるだろう。
ロールケーキに代表されるように、スイーツ定番のおいしさが何かと考えれば、「クリームにプラスして、ふんわりとしたスポンジ生地が定番のおいしさとして受け入れられている。さらに、他人に勧めたり、贈答用に相応しいプラスα要素、プレミアム感も求められている」と清原氏。
ロールケーキに続く次のトレンドを創造しようと同社が提案に力を入れているのが生パウンドだ。パウンドケーキといえば通常はバターケーキで日持ちのするものを想像するが、生パウンドの“生”は日持ちのしない生菓子を意味し、“パウンド”はパウンド型のスイーツの意味。特別な材料は必要とせず、卵と小麦粉とクリームがあれば、どこの洋菓子店でも簡単に作れる。ロールケーキと同様の材料だが、違いは「もこもことした見た目の新しさ。カットした時にトロッとした瑞々しいクリームが中から出る驚き。そして、おいしいクリームをたっぷり使い、おいしい生地と組み合わせたおいしさ」にあると同社食品応用研究所の五味悦子氏はいう。誰もが知っているスポンジ生地とクリームの味で安心して手が出せ、人数に合わせて切り分けられ、食べたい分だけ食べられる。クリームが飛び出ださない形状なので、手土産等のお持たせスイーツとしての適性も高い。自宅に客を招くホスト側も含めて、今後のスイーツのキーワードは「おもたせ&おもてなし」にあると五味氏は見ている。
昨年6月頃から洋菓子業界へ生パウンドの提案を始め、東京や福岡、神奈川、静岡など流行に敏感な地域だけでなく、徐々に全国的に採用が進んでいる。昨年末に実施した2,000人規模のインターネット調査では、生パウンドの認知率は15.6%と上昇中だ。新柴又の「お菓子屋ビスキュイ」、千葉・海神の「菓子工房アントレ」、横浜の「パティスリー ラ・ヴィ・ドゥース」、銀座などの「パティスリー 風と土」といったリテールから、SOLA、資生堂パーラーやサンフルーツなどデパ地下で販売する店へ広がり、ありあけやアンテノールなどチェーン店へと生パウンドを品揃えに加える動きが広がってきた。ドンレミーの「ほわほわ生パウンド」は中四国のローソンで先行発売されており、大手コンビニへの採用にも期待されている。人気リテールでは、1日20~40本を売り上げるところもある。
バリエーションとして、トッピングをしたり、スポンジ生地を黒糖風味にしたり、生地もクリームもチョコレート風味にアレンジするなど、バラエティを増やすリテールもあらわれている。また、粉の一部を米粉やタピオカでん粉に置き換えて、食感に変化をつけたり、地場の牛乳を使ってオリジナリティを演出するところもある。
ただ、スポンジ生地とクリームを組み合わせたスイーツということでは、ロールケーキとのカニバリをどう避けるかが課題だ。しかし、カットした際に、中からトロッと出てくる瑞々しいクリームが生パウンドのひとつの特長。通常、ロールケーキは比較的しっかりとクリームを立てるが、生パウンドのクリームは6~7分立て程度を勧めているという。
もこもことした形に焼いたパウンド型のスポンジ生地の底から細い口金でクリームを充填するというのが、生パウンドの作り方。その用途に相応しい「トロッとした食感のクリームとふんわりとしたスポンジの新しい感動を提供するクリーム」として同社が提案しているのが乳脂肪分45%のクリーム「CLASS-F4545」だ。生乳感あふれるミルク風味と口溶けの良さ、1年を通じて安定した品質、洋菓子にした時にフルーツが映える真っ白な色が特長となっている。
乳にこだわったプレミアムクリームに位置づけ、原料には熊本県荒尾地区の半径10km県内の約10軒の酪農家の生乳を使用している。クリームへの処理は、集乳後24時間以内に処理し、鮮度を重視するとともに、牛に与える飼料を年間通じて配合飼料にすることで、生乳の色、風味といった品質のブレを抑えている。青草や干草を食べさせると、生乳の色や味が変わってしまうからだ。「CLASS-F」を使用しているユーザーからは「ムースにした時も非常にきれいな色に仕上がる」といった声が寄せられている。真っ白なクリームには合わせる素材の色を引き立てる良さがある。
通常の生クリームはホイップした時に締まりやすく、生地にたっぷり充填する際に作業性が悪いこともあるが、「CLASS-F4545」はおいしい固さでホイップを止めることができ、瑞々しい食感を実現できる。また、生クリームは圧力に弱く、細いノズルを通すと表面が荒れて固くなりやすく、バサバサした物性になりがちだが、ホイップ後もなめらかな状態を保てるようになっている。作業時間を短縮でき、よりおいしい状態を長く維持することができる。
不二製油は、すべてにこだわるパティシエのために、同社の味や機能、品質管理、物流等のノウハウを注ぎ込んだ最高品質ラインに「CLASS-F」を位置づけており、「CLASS-F4545」に続いて、今年2月中には第2弾として植物性クリームの「CLASS-F0035」(無脂乳固形分5.5%、植物性脂肪分35%)も発売する。