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かどや製油が営業概況を報告 予断を許さない原料環境

 かどや製油は8月22日に都内で会見し、営業概況や今後の販売方針について小澤二郎社長と佐野雅明専務が説明した。
 同社の当期第1四半期の業績は、売上高57億2,100万円(前年同期比0.7%増)、営業利益3億4,500万円(同45.0%減)、経常利益3億7,500万円(同52.1%減)、四半期純利益2億2,900万円(同51.0%減)と微増収大幅減益となった。

 ゴマ油の販売については、家庭用の4~6月は同業他社との競合で苦戦したが、6~7月の回復は顕著で、計画を上回る実績を7、8月は達成できる見通しにある。これまで苦戦が続いた原因は、原料搾油ゴマが高騰する中でトップメーカーである同社が先陣を切って価格是正を行ったことにあったが、ここへきて他社の販売価格もあがっており、特に純正ゴマ油の価格差は縮まってきている。家庭用の販売シェアは過去1年で10%近く落ちた。しかし、「足元の6~8月を見ると、急激にわれわれのシェアがアップしており、この秋に向かって、1年間非常に苦労した甲斐があった」(佐野専務)というように、純正ゴマ油200gの特売実勢価格は298円がひとつの指標になってきた。「販売戦略としては、少し家庭用を積極的にという姿勢に変えている」というように、ケースバイケースである程度の特売に応じる構えも見せている。
 一方、業務用については、この1年で純正でいえば斗缶当たり1,200円見当の値上げが実勢化した。しかし、それでも搾油原料ゴマの価格上昇をすべて吸収できておらず、今後さらに100円/kgの価格是正が必要との見方を示した。同社の今年度第1四半期の業務用ゴマ油の販売価格は、前年に比べて価格は上昇したが、数量は約3%減となっている。6月納入分から値上げを実施したばかりであることや、年末の需要期に向けて極端なゴマ油離れを避けたい意向もあり、今後の業務用の価格是正の実施時期については、為替動向や原料状況を見極めた上で、年明け以降をめどに判断する考えとしている。佐野専務は「緊張感を持った商売を続けざるを得ない。一方で、工場の操業もあるので、非常に厳しいと思っている」と語った。
 加工用などバルク品については、過去1年間で30%程度の上昇したが、来年3月までにさらに20~25%の引き上げに理解を求めていく。

 ゴマ油の輸出については、第一四半期は数量が約6%増となり、円安もあって販売価格は約12%増加した。前年の第一四半期以降、2度の価格是正を行ったが、国内に比べて比較的スムーズに値上げに対する理解が得られている。米国向けで最大のライバルとなっていた台湾の富味郷のゴマ油に工業用綿実油が混入していた問題もあって、台湾産ゴマ油を敬遠する動きが見られ、PBを含めてかどや製油のゴマ油への引き合いが強まっている。輸出用ゴマ油についても、さらなる価格の引き上げが必要との見方を示しているが、「年末までに、56オンス缶のPBの受託がほぼ固まっており、輸出については前年の数字を割ることなく来年の3月まで行けると思っている」(同)と期待を寄せている。
 北米向け以外に、欧州向けのゴマ油輸出も順調に拡大しているほか、トルコや中近東向けに練りゴマ製品の拡販を目指していく。

 食品ゴマについても、第一四半期は販売価格は前期比で増加したが、販売数量は減少した。しかし、練りゴマの引き合いは好調に推移しており、5月以降フル稼働が続いており、生産能力の増強を検討している。
 セサミンなどの通販事業は今期も着実に成長を続けており、前年比30%増となっている。今秋には新製品の投入を予定している。また、かどや製油はJA香川とコラボレーションし、ゴマ油の生産拠点である香川県・小豆島で辛味の強いとうがらしの栽培を始めた。商品企画、開発への準備を進めていく考えだ。

 搾油ゴマの原料環境は、昨秋2,400ドル/トンを超え暴騰した後、今年に入り2,200ドル中心のレンジで推移してきた。6月以降、インドの春の収穫が予想以上の増産となったことから、一時1,800ドル台に軟化したが、インドの秋収穫用の播種がモンスーンの遅れから例年より1カ月遅れ、減産懸念が生じている。高値推移するゴマへの作付け意欲は主要各国とも高いが、例えば中国では黒ゴマ産地を中心に降雨が少なく、ミャンマーも干ばつと伝えられ、思ったほど生産が伸びないといった可能性も指摘されている。
 インドの春収穫、タンザニアやモザンビークといった東アフリカの収穫が順調に終わり、韓国のテンダーをきっかけに一旦軟化した相場は、再び2,000ドルまで反転し、現在は1,900~2,000ドル見当の相場付きとなっている。昨年と似たようなパターンで相場が動いている。
 秋に収穫を迎えるナイジェリアやブルキナファソといった東アフリカのゴマの作付けは高値相場を受けて拡大していると見られ、昨年のような暴騰には至らないという見方もあるが、収穫を終えるまでは予断を許さない状況だ。