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花王が脱デフレ型成長モデルの構築向け高付加価値化推進

 花王は11月26日、東京・港区のホテルニューオータニにおいて有力販売店との懇談会を開催した。懇談会に先立ち澤田道隆社長と吉田勝彦常務が会見し、事業の方向性や商品動向について説明した。
 澤田社長はまず、花王の高付加価値戦略をさらに強める考えを示し、「一企業のスタンスだけではなく、業界のトップメーカー、日本国を代表する企業の使命として取り組まなければならない」と強調した。「高いレベルでの高付加価値製品、サービスの開発、マーケティングや生産、販売には大きな投資が必要になるが、お金を上手く使い、これまで以上に売り上げを増やし、そして利益を生み出し、得た利益をさらに高付加価値化に投資し成長を続ける脱デフレ型成長モデルを何としても作り上げる必要がある」という信念がある。
 同社の場合、設備投資額は2012年までは400億円台だったが、13年に600億円、14年には650億円を超える水準に拡大しており、研究開発費や販促費も大きく増加させている。これと平行して、投資を最大限活かせるように資産の最大活用を図りながら、利益の出る構造への変換を進めてきた。「今年投入した高付加価値の新製品や改良品が上手く進み、トイレタリー全体のシェアが前年よりアップするとともに、第3四半期終了時点で、増加させた2倍以上の利益増を達成している。ただ、原材料の持ち出しが前年よりかなり多く、営業利益は対前年1.2%減となったが、最も売り上げ・利益が大きくなる第4四半期にこれがプラスに作用してくる」と2014年12月期に自信を見せた。

 より高い次元での付加価値製品の開発に当たり、花王らしいサイエンスベースのモノづくりが考え方の根底にある。「本質研究をしっかりと行い、その研究成果に基づいて消費者に驚きや感動、気付きを与えられる製品の開発を行うというこだわりがある」。ひとつは、皮膚や毛髪、健康や代謝、五感と繋がりのある脳や神経を対象にした本質研究。そしてもうひとつは、界面や水、泡、繊維、光や色、菌などの微生物を対象にした物質の本質研究だ。今年の有力販売店懇談会では、展示ブースの中央で、これらの本質研究を製品開発に活かした事例を研究員が来場者に説明しており、花王のモノづくりへの考え方や姿勢をより深く知ってもらう工夫を凝らしていたことも、研究開発出身の澤田社長らしい試みだったといえる。

 吉田常務は、事業戦略の考え方について説明した。まず考え方の基本は「R&Dが創りだしたイノベーティブな技術価値を生活者が最も満足する商品価値へと変換し、それを販売部門であるCMK(花王カスタマーマーケティング)と一緒になって、価値の伝達をしていく」という花王のよきモノづくりのバリューチェーンの構築にある。「これを社会や生活の変化に合わせて上手く対応していくことが重要」になる。
 こうした戦略のポイントを吉田常務は3点挙げた。ひとつは、常に消費者の満足度ナンバー1であり続けること。2つめに、少子高齢化や人口減少が進む中で、市場創造型商品をどれだけ打ち出せるか。「消臭ストロング」のようなシニアトイレタリー市場の創造や、この秋発売した「マジックリン ピカッと輝くシート」のような新しい掃除市場の提案だ。「競争に打ち勝つ商品ももちろん重要だが、市場を創造する商品に力を入れていきたい」という。そして、3つめは澤田社長も現状を説明したアジアでの成長だ。
 「花王の成長を、愛されるブランドづくりを通して、さらにスピードの早い商品づくりにも挑戦しながら、今後の成果に結び付けたい。ただし、花王の成果は、市場創造と結び付けられ得ると一番良いと思っている。どうしても日本の市場はこのまま行くと縮小する状況にあるので、やはり日本の市場が活性化する商品のスピードを上げていくことが一番重要だろうと思う」というように、ナンバー1にはこだわるが、愛された結果でのロングセラーブランドと、市場創造に繋がるブランド育成に注力していく考えだ。