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雪印メグミルクが家庭用マーガリン類などでPHOs不使用へ

 雪印メグミルクは2月1日、東京・新宿区のリーガロイヤルホテル東京において「2018年春季新商品発表会」を開催した。発表会の冒頭、板橋登志雄常務執行役員は、消費者のライフスタイルや価値観が多様化する中で「これからの時代は、自分にとって健康によいもの、自分にとっておいしいものをできるだけ多くの選択肢から選び抜く消費者の欲求を満たす必要がある」と指摘し、健康意識の高まりと多様化する食ニーズに対応するアイテム強化を重要テーマに掲げ、2018年春季新商品・改良品合計60品を開発したと説明した。
 特に、健康意識の高まりに対応するアイテムとして「家庭用マーガリン類・ショートニングのすべての商品について、トランス脂肪酸を多く含む部分水素添加油脂を使用しないという改良を行う。ユーザーの関心事であるトランス脂肪酸を低減することでマーガリン類の需要回復を図っていく」ことを強調した。3月上旬以降順次実施していく。
 その背景については、乳食品事業部の石川和男氏が説明した。トランス脂肪酸という言葉が注目され始めたのは2000年代前半のこと。冠状動脈疾患のリスクを高めるとされるトランス脂肪酸について、2003年にFAOとWHOが摂取量を「1日当たりの総摂取エネルギー量の1%未満」にするよう勧告したのを契機に、米国やデンマークなどでトランス脂肪酸に関する規制が始まった。米国人に比べて日本人の1人当たり1日のトランス脂肪酸摂取量は少なく、健康への影響は小さいと考えられていることから、トランス脂肪酸に関する報道があっても、日本ではあくまで一時的な影響にとどまっていた。
 しかし大きな転機が訪れた。2015年6月に米国FDAは、トランス脂肪酸を多く含む部分水素添加油脂(PHOs)をGRASの対象から3年の猶予期間を経て外すと発表した。この発表は日本でも報道され、トランス脂肪酸に対するネガティブイメージが広がり、トランス脂肪酸を含むものの代表例として注目が集まったマーガリン類の需要は減退した。今年6月にはその猶予期間が過ぎ、例外を除いて食品へのPHOsの使用が米国で禁止されることになる。そのため「再び注目が集まる今年6月に向けた準備が必要」というわけだ。
 同社がマーガリンの購入意向を調査したところ、米国FDAの発表前後の比較でマーガリンを「買いたくない」「あまり買いたくない」と答えた人は9ポイント増加し40%に迫る一方、「買いたい」と答えた人は9ポイント減少し24%に落ち込んだ。マーガリンを買いたくない理由として「健康によくないから(63%)」、「トランス脂肪酸が含まれるから(61%)」が上位2つに挙げられ、「ネガティブイメージの拡散が購入意向の減少に繋がっている」ことが推察される。
 しかし、「お客様にもう一度安心してマーガリン類を召し上がって頂きたい」として、今回、家庭用のマーガリン類・ショートニングのすべての商品をPHOs不使用の配合に改良することで、需要減のリスクに対応していく。
 ただし、PHOs不使用とするのは簡単ではなかった。PHOsを減らして他の固形油脂を使えば、トランス脂肪酸を減らすことはできるが、風味の良さや、ぬりやすさが損なわれてしまったり、飽和脂肪酸が一定量以上に増えてしまうと、コレステロール0の表示ができなくなるという問題があった。これらの課題を解決するべく、同社は長年培ってきたマーガリン類の研究・製造技術を駆使し、PHOs不使用でも独自の乳化技術でぬりやすさを、結晶化制御技術で風味の良さを維持した。さらに、新規原料油脂を活用しながら油脂加工技術と油脂配合技術を工夫することでトランス脂肪酸と飽和脂肪酸両方の含有量の低減化を実現し、コレステロール0の訴求の維持にも成功した。
 また、消費者への情報発信も大事な役割であると捉え、2段階に分けて丁寧に伝えていく。まずステップ1として3月の改良当初から「パッケージから当社ホームページ内に誘引し、改良の内容だけでなく、マーガリンと健康に関する詳細な内容を説明して安心感を持ってもらう。米国での規制開始までは不安を煽らないように、あまり認知されていない部分水素添加油脂の文言は(この時点では)使用しない」。次にステップ2として「当社のトランス脂肪酸低減の取り組みについて、パッケージ上や店頭ツールから積極的に情報発信する。6月からは部分水素添加油脂の文言が認知されていくことが予想されるため、部分水素添加油脂不使用の文言を使って積極的に訴求する」としている。ネオソフトの妖精“ネオッピー”と、マーガリンが大好きな小学生“みらいげんき君”がわかりやすい言葉で説明する内容を予定している。
 一方、マーガリン類の新商品としては、不二家「ミルキー」の味が楽しめるパンスプレッド「ミルキー ソフト」を3月1日に発売する。パンのおいしさを引き立てる豊かなミルク感と自然な甘さの練乳風味が味わえる。不二家「ミルキー」の30~60代女性の認知率、食経験は98%で、好感度もそれらの年代すべてで約80%以上とされる。昨年春の新商品で話題を呼んだ「雪印コーヒーソフト」に加え、甘味系商品の品揃えを強化し、パンスプレッド市場を活性化していく。