• 企業

かどや製油が業務用のゴマ油・食品ゴマを値上げ

 かどや製油は、ゴマ油・食品ゴマの業務用商品について2019年2月1日から、それぞれ5%以上の値上げを実施する。11月20日に都内で業界紙誌と記者会見して正式に表明した。
 小澤二郎社長は会見で、まず、今年度上期を振り返って「今年はかつてない猛暑でスーパーに買い物へ行っていられないという声も多く聞かれたものの、さほど大きな影響はなかったが、それ以外に、台風や地震と相当に商売の足を引っ張る要素が多かった。大きなマイナスが出るのではないかと不安に思っていたが、売り上げも大きな変化なく上期を乗り切ることができた。昨年11月にカタギ食品が傘下に入り、一生懸命営業活動をしているが、売り上げは思うように伸びていないものの利益等は予定通りに確保しており、この下期でさらに売り上げを伸ばすことを期待している」と総括した。
 原料については「どんどんと上がってきて、この1週間くらいのところで(搾油用原料ゴマで)2,000ドル/トン近いような話まで飛び出してきた。少々静観しようと思っているが、製品の生産量が増えており、どうしても買い付けをしていかなければならず、非常に悩ましい。間違いなく高い原料を調達して、使っていかなければならなくなるので、業務用については2月から正式に値上げをする」ことを明らかにした。家庭用商品については「拡売条件費などの見直しをしたり、少し様子を見た上で判断したい」との考えを示した上で、値上げの影響については「少し売り上げに影響が出ることを覚悟しており、下期は乗り切るというより、マイナス要素が出てくることを見越していく。上期のプラスを下期で使うかたちになろうかと思う」と述べた。

 ここまでの販売状況について佐野雅明専務は「4~8月は非常に良く、家庭用は数量107%で好調だったが、地震や風水害があって9月は悪かった。一番大きかったのは、即席めん等の非常食や、まだ猛暑だったので飲料の特売が多く、9月に予定していたゴマ油の特売が極端に入らなかったことであり、9月は惨憺たる状況だった。それでも数量ベースで4~9月は家庭用が104%、業務用は8月まで100%を超えていたのが4~9月でほぼ100%になった。合わせると前年より少し良かったという状況だ。9月が悪かったので不安に思っていたが、10月に入るとかなり回復し、4~8月の水準まで戻してきており、ほっとしている」と説明した。
 同社のゴマ油の販売が好調な要因には、ひとつは400g容量から600g容量へ特売の中心を移した量販店が増え、大型化が進んだことがある。もうひとつは「純正ごま油濃口」の200g容量を今年7月に新発売し、「金印純正ごま油」に加えて「純正ごま油濃口の裾野も広がったことがある。7月から実施しているゴマ油商品購入者を対象にした「宝塚歌劇ご招待キャンペーン」も販売増を下支えしている。
 同社のNBのゴマ油の販売は好調だが、その反面、PBの販売はやや落ちている。北海道の地震の影響によるところが最も大きかったという。また、宝塚歌劇の招待キャンペーン実施にともない、NBの露出が高まるとともにその販売が好調になったことの裏返しでもある。ただし、キャンペーン対象品はほぼ売り切っており、11、12月は少しPBが少し戻す傾向にある。いずれにしても、NB、PBを問わず、トータルでゴマ油の販売実績が前年を超えており、家庭用の需要はそれだけ順調に推移していると言える。
 一方、搾油用原料ゴマ価格は「今は1,700ドル/トン」まで上昇している。2017年度の平均通関価格が1,044ドルだったのに対し、18年4~9月は1,161ドルに上昇しているが、下期はさらに高値原料が入港してきており、18年度の平均は1,300ドル程度が予想されている。佐野専務は「1~3月は1,300ドルを超えるような状況になり、さらに19年度4~6月は1,500ドルを超えるのではないか、という勢いで上がっていく」との見方を示した。過去数年は1,000~1,200ドルのレンジを中心に行ったり来たりを繰り返したが、それ以前には2,000ドル台に暴騰していたわけで、現状の価格では「農民がハッピーではない」から、増える世界の需要に対して供給が潤沢ではないことがゴマ相場を上振れさせている。
 また、食品ゴマは搾油用ゴマよりさらに高く、例えば「グアテマラ産は2,200ドル程度のオファー。そこで商売が成立しているかは別にして、2,000ドルを超えるような値段であり、パラグアイ産もそれを見て2,100ドルとか2,200ドルを志向してくる」という。しかし、中国や日本をはじめ消費国側は、あまりにも急激に上がった水準についていけていない。「買い手と売り手(の思惑)が凄く離れていて、われわれもそうだが、こんな値段で原料を買ったらどうなるのだろうという状況」と頭を悩ますことになっている。

 同社はこの搾油用原料ゴマについて1,700ドルに上昇した価格で実際に原料をまだ契約したわけではないが、いくらで買えるのかと言えばこの価格より安くは買えない状況だ。過去数年、運賃や燃料、人件費、包材コストは上昇したが、原料が比較的安値で安定していたため、製品価格を値上げするまでには至らなかった。しかし、「ここへきて、もう去年から今年だけで原料コストが15%上がっている。これが1,300ドルになれば20数%増、1,500ドルになれば50%増と、原料コストだけでも上がることになる」と悲鳴をあげる。
 原料価格が実際に前年に比べて上昇していること、また、運賃、燃料、人件費、包材などのコスト上昇を受けて、同社は2019年2月1日より、ゴマ油および食品ゴマの業務用商品について5%以上の値上げを実施する。同社が業務用商品を値上げするのは2014年6月以来になる。
 上げ幅の意味合いとしては、すでに原料を契約してこれから入ってくるものに対処するためで、2019年度4~6月までの原料等のコストの上昇をカバーできる程度としている。現状オファーが出ている1,700ドル見当から下がらない状況が続いたり、原料価格が上昇した場合には、追加の価格改定を考えざるを得ない。当然、家庭用の原料コストも上昇しているが、「業務用は家庭用とは容器が違い、コストに占める原料の割合が大きく、原料価格が上昇すれば強烈にコストに跳ね返る。家庭用についても、このままだと値上げに手を付けないといけないが、慎重に検討する」考えだ。