昭和産業が経営概況を報告
足場固めの中計「17-19」の目標達成に自信
posted on : 2019.03.14
昭和産業は2月7日、東京・丸の内の日本工業倶楽部で記者会見し、会社概況や各事業部の取り組みについて説明した。
同社の2019年3月期第3四半期の連結業績は、売上高1,948億200万円(前年同期比10.0%増)、営業利益73億5,300万円(同35.1%増)、経常利益85億1,100万円(同33.9%増)、四半期純利益60億6,500万円(同42.7%増)の増収増益となった。3月期の業績予想については、昨年11月に公表した修正予想から変更はなく、ここまでの進捗率としては売上高が約75%とほぼ計画通り、各利益は90%を超え、予想を大幅に上回る進捗率を示し好調に推移している。新妻一彦社長は会見の冒頭、第3四半期業績を報告した上で、営業利益の増加要因として、販売数量の増加や、原価・販売単価差の大幅な増加を挙げた。
セグメント別の業績では、製粉事業は、マーケット分析を生かした提案営業により販売数量が前年同期を上回った。また、輸入小麦の政府売渡価格の引き上げにともなう小麦粉製品の価格改定や、昨年4月よりガーデンベーカリーなどを子会社化したことにより、増収増益になった。油脂食品事業については、業務用油脂と家庭用油脂における販売管理の徹底により、営業利益が前年同期に比べて大きく改善している。家庭用分野では、注力しているオリーブ油が非常に大きく伸長している。糖質事業は、少し苦戦しており、原料相場と販売価格のアンマッチ、競合との価格競争、エネルギーコストの上昇もあり、売上高は前年を上回ったものの、営業利益はコスト増加分を転嫁するに至らず、前年同期を下回った。飼料事業についても、懸案の販売数量は前年を上回ったものの、一方で配合飼料はコスト増加分を価格転嫁できず、飼料事業全体の営業利益は前年を下回った。こうした中、「原料価格、市況と厳しい事業環境が続いているセグメントもあるが、販売数量も含め、原料のポジションに見合った適正価格での販促活動などにより、各事業の課題に応じた対策をしっかり取ることで、今期の業績予想及び中期経営計画『17-19』の最終年度の目標である連結経常利益115億円の達成を目指す」としている。
一方、中計「17-19」の進捗については「長期ビジョンの実現に向けた足場固めの期間と位置付けている。その一環として、主力工場である鹿島工場の製油、糖質、荷役設備において、機能性製品等の生産能力増強およびBCP対策を目的に約60億円の設備投資を現在実施している」ところだ。
製油工場では、抽出工程の生産効率向上とロスの削減を目的に最新設備を導入するため、35億円の投資を実施しており、昨年2月に着工し、2020年9月の竣工を予定している。鹿島工場には抽出ラインが2つあるが、1973年の操業から半世紀近く経ち老朽化していることや、「2つある抽出工程が一部交錯しており、既存設備を置き換えることでBCP対策にもなる」としている。最新鋭の抽出工程に切り替えれば当然、生産効率・歩留まりも上がる。油脂の拡大については鹿島に集中して強化していく方針を改めて示したと言える。
荷役設備では、荷役効率の改善およびBCP対策のために3基あるニューマチックアンローダーのうち1基を10億円かけて更新を進めている。昨年10月に発注し、2020年5月に据付完了を予定しており、電力削減22%を見込んでいる。また、糖質工場では、コストダウンを目的に、一昨年に実施したコーンスターチ製造工程の複線化に加えて、機能性の高い粉末水あめ製品の生産能力アップ(1.3倍)に約10億円の投資を行っており、昨年9月に着工し、今年9月に竣工を予定する。
一方、海外事業については、中国における台湾・大成集団とのミックス・製粉事業や、ベトナムではダイフォン製粉グループのインターミックス社に資本参加している。さらに昨年11月、インターミックスメコン社を合弁で設立し、プレミックス生産工場の建設を決め、2020年春の操業を予定している。「ベトナムにおけるプレミックスの生産拠点は2工場となり、合計で約2万トンの生産量を確保する」予定で、さらには「台湾、東南アジアで新たな展開も具体的な事業化の検討段階に入っている」としている。
「17-19」では基本戦略に社会的課題解決への貢献も掲げている。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食、日本人の伝統的食文化の継承や発展にも貢献していきたいと新妻社長は意欲を示し、「その活動のひとつが本年4月1日に導入予定の天ぷらに関するマイスター制度。世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した天ぷら粉のパイオニア企業であり、天ぷら・天ぷら粉に関連した知識・技術・技能などの資産を体系的に整理し、次世代へ継承しながら発展させることを目的にこの制度を制定した」という。天ぷらに関するマイスター制度の階級は、初級・中級・上級の3段階に設定し、初年度はまず初級・中級向けにeラーニング等の試験を実施して、社内の資格者を増やしていくことに注力する。将来的には上級のマイスターを育成し、社内向けの情報発信や啓蒙活動を積極的に行い、天ぷらの活性化に繋げていく考えだ。
「当社グループの今年のテーマは変化」だと新妻社長は強調した。働き方改革や売場のボーダレス化、海外との経済連携、消費増税など大きな変化が訪れる中で「常日頃からアンテナを高くして、360度全方向から物事を観察し、変化の予兆を1秒でも早く捉え、対応できる感性を磨くことが重要だと年頭の挨拶の中でも社員全員に話した。様々な取り組みや改革を進め、変化への対応力を高めていく覚悟だ。変化にはリスクもあるが、片方では同時に大きなチャンスでもある。グループ全体でこの大きな変化をイノベーションのチャンスと捉え、さらなる高みを目指す」と語った。