ブラマー社取得した不二製油グループ
環太平洋2位の業務用チョコレートメーカーに
posted on : 2019.03.12
不二製油グループ本社(不二製油G)は2月19日、東京・大手町のLEVEL XXI東京會舘で、昨年11月に子会社化すると発表した米国のBlommer Chocorate Company(ブラマー社)と、財務戦略に関する説明会を開催した。なお、ブラマー社の株式取得については、今年1月に手続きを完了している。
説明会の冒頭、清水洋史社長は「ブラマー社は当社以上に長く80年間、チョコレートの事業をしてきた米国の業務用チョコレートの雄である。大きな期待をもって、不二製油のこの新しい試みを歓迎してもらいたい」と挨拶した。ブラマー社のガバナンス体制については、不二製油Gの酒井幹夫CEOが取締役会長に就き、ピーター・ブラマー社長、ニール・マーフィCFOに加えて、不二製油Gの松本智樹CFO、米国子会社のフジスペシャリティーズの高杉豪社長の5名からなる取締役会を設置し、重要案件を決定していく。
ブラマー社のピーター・ブラマー社長は、グループの一員となったことに興奮と喜びを示した上で、ブラマー社の事業概要や歴史を紹介した。ブラマー社は業務用チョコレートの北米ナンバー1企業で、世界でも第3位の規模を誇る。また同時に、北米で最大のカカオ豆加工業者でもあり、カカオバター圧搾でも北米最大の事業者である。そのため「カカオ豆の調達および加工では規模の経済を発揮できる」強みがある。1939年の創業から今年で設立80周年になるブラマー社は、製菓、ベーカリー、スナック、乳製品および健康栄養食品といった市場を網羅してチョコレートブランドを展開している。同社のコアコンピタンスは「当然ながらカカオ豆の加工とチョコレートの製造だが、コモディティのリスク管理や、工程、製品のイノベーション、サステナブルなカカオ豆の栽培でもよく知られたリーダーとなっている。現在の事業規模は約10億ドル、社員数は約900名で、北米、カナダ、中国といった戦略的な拠点に工場を構えている」という。
ピーター・ブラマー社長の祖父であるヘンリー・ブラマー氏がイリノイ州シカゴに設立したブラマー社は、1970~80年代にかけてカリフォルニア州ユニオンシティやペンシルバニア州イーストグリーンビルに工場を設立して事業を拡大していき、2006年にはカナダのトロント近郊のコンパウンド、製菓コーティングの工場を取得した。そして2017年に北米外の初の工場として中国・上海に新たな工場を開設した「中国の工場には大きな期待をしている。長期的な市場の成長潜在力が非常に高い」とピーター・ブラマー社長はみている。
同社が元々手掛けていたのは原料チョコレートの製造だが、コンパウンド、製菓コーティングへと製品を拡大していき、1985年にはカカオ事業に進出して、その後、カカオリカーや、アルカリ処理カカオパウダー、ナチュラルおよび脱臭カカオバターの販売も手掛けるようになった。1995年にはプレミアムコレクションとして「Signature Line」を立ち上げ、2016年にはプレミアム原料チョコレート「Founder's Reserve」の販売を開始した。
ブラマー社の市場における真の差別化要因は「顧客サービスの一点に焦点を絞っていることである。それゆえに、非常に深く長い関係を顧客と築かせてもらえている」とブラマー社長は強調し、“世界中のチョコレート業界で信頼されるパートナーを目指す”という同社のビジョンは、顧客との共創を大切にし、人のために働く不二製油の精神と共通するところがあると清水社長も認めている。
ブラマー社長は「不二製油とブラマー社が一緒になることは、世界への影響力を強くすると思っている。多国籍企業により良いサービスを提供するためのグローバル展開をさらに図れる。調達とサプライチェーンの効率化を実現するための規模も拡大できる。チョコレートと油脂製品についてh,既存顧客基盤への相互販売が可能になり、顧客もこれを歓迎し、すでに良い反応が聞こえてきている。不二製油の油脂技術を活かしたチョコレート製品のイノベーションにも取り組め、同時に、カカオと油脂のサプライチェーンにおける持続可能性への取り組みを強化し、最適な手法を共有できる」と述べた上で、「このコンビネーションの中でも取り分け嬉しく楽しみに思っていることは、業務用チョコレートでの世界3位の地位を確固たるものにできることであり、世界2位も狙えると思っている」ことだと語った。
続いて、不二製油Gの酒井幹夫CSOがブラマー社の取得意義と展望について説明した。不二製油Gは2017年度から推進する中期経営計画「Towords a Further Leap 2020」の基本方針のひとつにコアコンピタンスの強化を掲げている。中でも、チョコレート事業の拡大を図るべく、2015年にブラジルのハラルド社、2016年にマレーシアのGUAN CHONG社およびその子会社で業務用チョコレートの製造・販売を行うGCB SPECIALTY CHOCOLATES社、2018年に豪州のINDUSTRIAL FOOD SERVICES社といった業務用チョコレート企業を子会社化し、世界で事業エリアを拡大してきた。油脂原料の強みのさらなる強化と、責任あるカカオの調達など様々な施策を打つ中で、今回のブラマー社取得に至っている。
その取得意義について酒井CSOは、1)環太平洋市場でのプレゼンス向上、2)米国市場の取得、3)強みの相互補完──の3点を挙げた。