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第3回国際シンポジウム「コメとグローバルヘルス」
コメを取り巻く環境や機能性成分としての活用を議論

 「第3回国際シンポジウム コメとグローバルヘルス~コメとコメ糠の科学とフィトケミカルス~」が11月29~30日、京都市の国立京都国際会館で開かれた。10年に一度開催されており、日本の貴重な国産資源であり、世界三大穀物でもあるコメを取り巻く環境や、食糧としてのコメでなく、米糠由来の機能性成分とそれらの医学をはじめ、あらゆる分野での有効活用法など、世界中の最新の研究成果を議論し、コメの現在と未来を考えるコメの国際シンポジウムとなっている。今回は世界から約400人が参加した。
 オープニングセレモニーでは、まず実行委員長を務める東北大学大学院農学研究科の宮澤陽夫教授が「1998年に第1回国際シンポジウムがまさにこの京都で開催された。第2回は2008年に和歌山で開催され、そのテーマは“コメと疾病予防”だった。コメは腫瘍な三大栄養素のひとつであり、世界の多くの人がコメを主食として生きている。特にアジアにおいて、コメは必要な栄養成分と考えられている。しかし、近年、世界の気候変動が顕著になり、コメの生産に影響を及ぼし、地域によっては食糧の欠乏が起きている。このシンポジウムでは、コメの貢献、すなわち健康・長寿への貢献をメインテーマに掲げ、7つの基調講演、5つのシンポジウム、そして約90の発表を予定し、400名近い参加者が米国、フィリピン、アフリカ各国、英国、タイ、中国、イタリア、チリ、インド、バングラデシュ、台湾、ミャンマー、そして日本の各国から参加する。1人1人が活発に議論し、コメについて考え、実り豊かな成果を持ち帰ってもらいたいと思っている。秋も深まってきた。日本の一年を通じて一番美しい季節である。ぜひこの日本の秋の美しさを食文化や都市の文化、この地方における静けさを含めて、文化を楽しんで欲しい」歓迎の辞を述べた。
 引き続き安倍晋三首相からのメッセージを宮澤教授が代読した。その内容は「第3回国際シンポジウムの開催を心からお慶び申し上げる。コメはアジア諸国に主食として愛されてきた。世界一の健康長寿国の日本においても歴史とともに作られてきた食文化の根本を成している。このコメの表面を覆う米糠の栄養成分や健康維持に対する効果は、近年特に大きな注目が集まっている。今回、世界のコメ生産国の研究者や関連企業が一堂に集い活発な議論が交わされ、国境を越えてコミュニケーションを取ることで、この国際シンポジウムが世界の健康に大きく貢献されることを大変嬉しく思う。ご参集の皆様にもぜひこの機会に開催地である京都の味覚も存分に楽しんでもらい、日本における食文化のルーツに思いを馳せてもらえば幸いである」というものであった。
 さらに農林水産省近畿農政局の神山修局長の挨拶や、世耕弘成経産相のメッセージ(経産省ヘルスケア産業課の西川和見課長が代読)に続いて、同シンポジウムの事務局を務める築野食品工業の築野富美社長が挨拶を行った。築野社長は「築野食品工業は、創業者である築野政次が今から70年前に事業を興したときから始まる。戦後の政策に沿って、コメの保管、倉庫、精麦事業、そして米糠、そしてコメ油、食用にならない部分を利用した工業用脂肪酸製品を生産し、さらなる米糠に潜む有効成分の抽出技術の開発に取り組んできた。よく考えてみると、これはまさに今、世界的に求められているSDGsの要求項目に他ならない」と述べた上で、「グローバルヘルスに貢献し、世界の人々の幸福に貢献したい。Rice is Lifeであると思っている。この重要性をしっかり認識していきたい。米糠はまさに生命であり、これが我々の科学的なミッションであり、使命であると思う。米糠には奇跡的な力があると思っている。貧困や飢餓、世界の正義と戦う力にもなる。エネルギーを蓄え、資源をさらに活性化させるものになると思う。コメは我々の生命そのものであり、この生命を大切にしていかなければならない。米糠は我々の人生であるとも言える。このシンポジウムを通して1人1人がさらに社会の明るい未来に貢献していければと思う」と語った。
 オープニングセレモニーの終了後、まず行われたのが宮澤陽夫教授による基調講演「ヒトの健康促進におけるコメとコメ油の世界への影響」(注)講演タイトルの原題は英語だが、便宜上、事務局訳を記載する。以下同)。宮澤教授は、コメが世界の三大穀物のひとつで、世界人口の約半分がコメを主食としていること、また、コメは良好なエネルギー源であり、糠には多くの生理活性成分が含まれる。コメは、脂肪酸やトリアシルグリセロール、糖脂質、リン脂質、そしてトコフェロールやトコトリエノール(T3)、γ-オリザノール、フェルラ酸、セラミド、植物ステロール、イノシトールといった栄養成分、さらには米糠たん白質米糠には多くの生理活性成分が含まれることを説明した。さらに、アジア諸国では、健康促進のために、コメやコメ油の生産を増やすことが期待されることや、コメ油のトコトリエノールは、低酸素誘導型VEGFの分泌やIL-8の発現をがん細胞において抑制し、腫瘍の成長を阻害することに貢献すること、また、気候変動に起因する稲作地帯の破壊に注意する必要もあることを紹介した上で、「新薬を含めて薬価は非常に速いペースで上昇しており、多くの国の社会保障やヘルスケアシステムをリスクにさらしている。これは日本においても同様だ。我々は責任をもって長寿を、80歳、90歳、100歳あるいはそれ以上まで、薬に過剰に頼ることなく適切な食事摂取で長寿を楽しめるような社会を構築しなくてはならない」と述べた。
 そのほか6つの基調講演、5つのシンポジウムが行われた。