• 油脂のトピックス

大豆油

 大豆油は油脂の大宗であり、シカゴにある大豆の先物市場が世界の油脂の相場をリードしている。米国が世界最大の生産国だが、ソイ(soy)の語源は鹿児島の方言であるソイ(醤油)からきている。パリ万博に薩摩から醤油が出品され、ソイとして紹介されたことから、ソイソースが転じて、大豆のことをソイbeanと呼ぶようになった。
 植物油は精製すればすべて同じように見えるが、実際はそれぞれ脂肪酸組成に特徴があり、風味や機能、用途が異なっている。大豆油は、リノール酸が60%占めていると同時に、リノレン酸の含有率が8%と多いことが特徴になっている。
 わが国で大豆油は、主に業務用市場で利用されている。家庭用では、酸化による戻り臭の問題があり、単独で使用されることは少なく、菜種油(キャノーラ油)との調合油としてサラダ油に配合されることが多い。2010年のわが国での生産量は46万7,707 トンであり、菜種油やパーム油(輸入量)に次いで、3番目の位置にある。
 世界での大豆生産量は、年間約2億6,000 万トン。このうち約2億トンが搾油され大豆油として約4,000 万トン生産されている。大豆の生産量は米国、ブラジル、アルゼンチンが世界の3大生産国で、世界の約8割を占めている。
 わが国の植物油の中心は長い間、大豆油であった。現在の製油産業が臨海地に大型の連続抽出設備を持つという形になったのは、大豆搾油の効率を第一に考えたからだ。
 しかし、わが国において大豆は古くから食されているが、搾油されるようになったのは明治時代に入ってからで、菜種などに比べて歴史は浅い。これには理由がある。大豆はもともと油分が18~20%と低く(ちなみに菜種は40~43%)、古い搾油技術である圧搾法では効率が悪く、油脂原料には向いていないと考えられてきた。油分の低い大豆が搾油され始めたのは2つの理由がある。
 ひとつは、肥料として豆粕(大豆ミール)が高く評価されたこと、さらに肉類の消費が増え、飼料用のたん白原料として豆粕が必要になったことが挙げられる。最初は豆粕が主産品で、大豆油は副産物だった。製油産業のトップメーカーである日清オイリオグループ㈱は、日清豆粕㈱としてスタートしていることからも類推できる。2つめの理由は、搾油技術が圧搾法から抽出法に進歩することで、油分の少ない原料も効率的に搾油できるようになったことがある。
 こうして大豆油の生産は大正時代に菜種油を上回り、昭和63年まで、わが国の植物油市場をリードしてきた。大豆油の生産量がピークに達したのは、平成15年のことで、75万7,827ンだった。原料としての大豆処理量のピークは平成14年で 402万3,268 トンだった。その後大豆の搾油量は減少し始め、ことに平成16年以降は、わずか数年で100 万トン以上減り、平成22年の搾油量は 247万3,480 トンと、昭和50年のレベルにまで落ち込んでいる。
 こうした大豆搾油の減少は、中国やインドからの国際相場を下回る安価な大豆ミールが大量に輸入されるようになったこと、ミール採算の落ち込みにより菜種搾油の採算が大豆を上回るようになったことが影響したものだ。


 わが国の大豆搾油量と大豆油生産量
            (単位:トン)
____________________________________________
   原料処理量 大豆油生産量 大豆粕生産量
____________________________________________
2000  3,720,718   694,447    2,830,747
2001  3,813,049   714,015    2,940,948
2002  4,023,268   757,827    3,066,707
2003  4,010,637   760,185    3,087,468
2004  3,418,681   639,200    2,627,087
2005  3,080,450   575,302    2,355,207
2006  2,978,171   575,739    2,257,923
2007  3,043,522   576,344    2,303,389
2008  2,802,284   542,335    2,137,250
2009  2,485,203   476,936    1,897,381
2010  2,473,480   467,707    1,863,591
____________________________________________
(資料:農水省「油糧生産実績」)