なたね油
posted on : 2011.08.31
菜種油は、わが国でもっとも多く消費されている油脂で、2010年の生産量は99万2,443 トン、これに輸入量の 9,043トンを加えると 100万トンを超える。2番目に消費量の多いパーム油の56万9,443 トン(輸入量)との差は大きい。
菜種油は世界的に見ると、パーム油、大豆油に次ぐ3番目の生産量で、3大メジャー油脂のひとつに位置づけられる。カナダ、中国、インド、ドイツ、フランスなどが主要な生産国だ。ただ交易量の比率は高くない。原料での交易量を見ると、大豆が2億5,000 万トンの生産量のうち、 9,500万トンが輸出されているのに対して、ナタネは 6,000万トンのうち 1,000万トンの輸出に止まっている。わが国のナタネ輸入量は 234万トン(2010年実績)と、単一国では世界一だ。
輸出国を見ると、カナダが世界の7割を占めており、世界的に輸出余力の少ない油脂原料というのが菜種の特長だ。オーストラリアが大豆における南米の役割を果たすことができれば、菜種の供給は安定感が増すといえよう。
わが国において菜種は江戸時代から幅広く栽培され、菜種油も主に灯明用に利用されてきたが、昭和に入り大豆の搾油が増え、戦後は海外からの原料輸入が自由化されとことで、国内での菜種栽培は衰退し、輸入大豆の搾油が主流を占めた。
その後1988年に、菜種油生産量が大豆油を上回ることになったが、菜種油の生産量が増えたのには幾つかの理由が考えられる。
ひとつは、カナダという安定した供給国があったことだ。カナダは菜種の栽培に力を入れており、年々作付面積は拡大し、生産量は右肩上がりで推移している。わが国への安定供給という責任を果たしてきた。
ふたつめの理由は、大豆ミールが大量に安価で輸入されるようになったため、ミールで稼いでいた大豆の採算が著しく低下し、菜種搾油が競争力を持ったこと。ライバル関係にある大豆の搾油事情の変化が、相対的な菜種の地位を高めたといえる。
3つめの理由は、菜種油の方がクセがなく使いやすいこと。特に家庭用のサラダ油はキャノーラ油(菜種油)が主力を占めており、加工用でもナタネ油の方に傾斜している。菜種油の方が幅広い使い方が可能だ。栄養面でも、米国でヘルスクレームの認可を受けるなど、オレイン酸の高い菜種油の健康イメージが上がっている。こうしたこともあり、米国では、菜種油が大豆油より高いプレミアム油として扱われている。
4つめは、世界的にオイルバリューが上がる傾向にあり、油脂の相場は高いレベルを維持している。油分が40%を超える菜種は、大豆よりこの点で採算的に有利になりやすい。
世界のナタネの生産量はこの10年で約1.5 倍に増えたが、その主な要因はEUにおいてバイオディーゼル燃料が急速に伸び、その原料として菜種油が使われていることにある。EUでは、生産される菜種油の半分以上が燃料用途になっている。こうした需要の急増を受けて、EUでの作付面積、生産量も大幅に伸びたが、需要の伸びには追いつかず、EUはこれまで菜種の輸出地域だったのが、この10年で輸入地域に変わってしまった。
こうしたEUの菜種需要を見て、EUへの菜種輸出への期待が高まったことで、周辺のウクライナやロシアなどでの菜種生産量が増えた。さらにカナダも菜種の採算性が競合する小麦を上回っている(遺伝子組み換えによるコスト削減で小麦に対する優位性を確立)こともあり、菜種の生産量を1,500 万トンにまで拡大する目標を立て、着実に達成に向かって歩を進めている。カナダでは菜種の品種改良が盛んで、新しいハイブリッド品種が中心になり、単収が高まっている。
菜種の搾油量と生産量
(単位:トン)
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原料処理量 菜種油生産量 菜種粕生産量
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2000 2,193,699 912,540 1,250,684
2001 2,126,407 882,679 1,213,700
2002 2,071,935 870,040 1,186,366
2003 2,094,660 863,321 1,193,314
2004 2,281,115 947,059 1,328,779
2005 2,252,429 931,995 1,293,592
2006 2,271,426 971,680 1,251,916
2007 2,147,328 942,236 1,215,995
2008 2,236,864 950,276 1,260,527
2009 2,163,099 928,589 1,197,820
2010 2,294,799 992,443 1,266,527
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(資料:農水省「油糧生産実績」)