落花生油
posted on : 2011.08.20
落花生油は、8大油脂の一つであり、世界的には年間約400万トンの需要があるが、わが国では約900~1,100トンの小さな市場に留まっている。
2010年のわが国の輸入量は565トン、生産量は344トン、合計909トンで、過去5年の平均に比べて2割ほど減少している。
落花生油は、業務用が大部分を占めており、家庭用は、ほとんど流通していない。
業務用では、中華料理の炒め油に使用したり、ラーメン店では、スープに入れたり、味噌に混ぜ込んで使用している。その他、中華まんや月餅の練り込み用途もあるが、以前に比べて大幅に減少している。
家庭用は、以前は大手メーカーによる新製品投入で活気が出た時期もあったが、定着せずに終わった。
落花生油本来の香りを活かした商品として、芳香落花生油がある。これは、グレードの高い豆を絞った香味が豊かな油で、そのままだと香りが強すぎるので精製油とブレンドされる。
独特の香りを活かして、フランス料理やイタリア料理のソースなどにも使用されているが、香りが強いので限られた用途にしか使えず、年間数十トン程度の規模に留まっている。
落花生油の需要は、この2、3年は陰りがみられるものの、長年にわたって概ね安定している。景気の低迷で業務用市場は厳しさを増しているが、他の油脂では代替できないため、根強い固定需要に支えられているといえるだろう。
原料面では、輸入油と国産品(搾油)があるが、輸入油が半分以上を占めている。油の輸入先は、数年前までは中国が最も多かったが、中国国内の油脂価格高騰により、シンガポールにシフトしており、07年からはシンガポールが輸入のトップに代わっている。
さらに、近年はベトナムからも輸入され、シンガポール、中国、ベトナムの3つの地域を中心に分散して調達される形になっている。シンガポールやベトナムも中国から原料を仕入れており、中国の国内需給がタイトになると、両国からの供給が低下する。近年、中国は、落花生油の輸入量を増やしており(08年0.5万トン→09年2万トン→10年6.8万トン)、同国の動向を注視する必要があるだろう。
なお、以前は、中国、シンガポールに加えて米国からの輸入も相当な量があったが、現在はごく僅かな量しか輸入されていない。
国産品については、国産落花生の“クズ実”と、規格外となった食用の輸入豆が使用されている。割合としては、輸入豆の方がかなり多くなっている。国内の落花生生産は、この10年間で半減しており、搾油原料の発生に対して、ある程度影響を与えていると推察される。
落花生の油分は、おおよそ37~38%で、精製すると歩留まりは32~33%になる。落花生を搾った粕は、肥料用中心に利用されている。
わが国の落花生・落花生油の供給量
(単位:トン)
_________________________________________
落花生 落花生油
生産量 国産 輸入 合計
_________________________________________
2000 26,400 504 609 1,113
2001 26,700 482 873 1,355
2002 23,100 488 745 1,233
2003 24,000 528 658 1,186
2004 22,000 444 769 1,213
2005 21,300 481 790 1,271
2006 21,400 580 688 1,268
2007 20,000 557 629 1,186
2008 19,400 332 712 1,044
2009 20,300 334 450 784
2010 16,200 344 565 909
_________________________________________
(資料:農水省、財務省)