• 油脂のトピックス

パーム油

 パーム油は、飽和脂肪酸のパルミチン酸を40%含む融点の高い半固型脂。分別により様々な機能を付与でき、融点の違いで多くの製品に分けられるという、他の植物油とは異なる特徴をもっている。以前は低価格で取り引きされ、所得の低い開発途上国にとっては欠かせない油脂だった。しかし最近では大豆油や菜種油との価格差は縮小し、場合によってはパーム油の方が高くなる逆転減少も珍しくなくなっている。
 2011/12年度の世界のパーム油生産量は、初めて 5,000万トンを超え 5,028万トンになると、米国農務省が予測している。インドネシア 2,540万トン(前年比112.5 %)、マレーシアは 1,840万トン(同102.2 %)で、この両国の合計が世界の87%を占めており、第3位国タイの 145万トンとは大きな開きがある。毎年 250万トンづつ増加しているが、その多くはインドネシアであり、マレーシアの増加スピードは鈍化している。
 インドネシアには新しい農園の開発余地がまだ多く残されているのに対して、マレーシアはカリマンタン(ボルネオ島)にしか余剰土地がなく、また一時期期待された単収のアップもここ数年は頭打ち傾向が出始めているからだ。マレーシアの大手農園(フェルダ、サイム・ダービー、ウイルマー、KLケポン、IOIグループなど)は、インドネシアやアフリカに投資し新規農園の開発に取り組んでいる。インドネシアが外資の農園への投資を認めて以来、マレーシア資本や中国資本の農園開発が活発になっており、マレーシアとインドネシアの利害がこうした大手資本を通して一体化しつつある。両国は競争相手というより、同盟関係に近い存在になっており、このことがパーム油価格を下がりにくくしているひとつの要因になっている。
 パーム油は世界の拡大する油脂需要を支えてきた。この10年、世界の油脂需給がバランスを保ってこられたのは、パーム油の生産が高い伸びを示してきたからだ。しかし、これからの10年、同様な役割をパーム油が果たすことができるかどうかは、分からない。
 環境面から、野放図なパーム農園開発に欧州で強い批判が出されているからだ。急先鋒のグリーンピースが昨年、インドネシアの大手農園シナールマスをターゲットに非難を強めたことで、ネスレ、ユニリーバ、クラフト、カーギルなど世界の食品・油脂メーカーがシナールマスからのパーム油購入を見直す方針を明らかにし、シナールマスも環境に配慮した開発に舵を切らざるを得なくなるということもあった。
 マレーシアの大手農園はRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に積極的に参加することで、環境問題での批判に対応しているが、このことは新規農園の開発にブレーキがかかることを意味し、油脂需要の伸びにパーム油がどれだけ対応できるかについて一抹の不安がある。油脂の価格を押し上げる一因になる。
 わが国におけるパーム油需要は、フライ油としての利用が中心になっている。即席めんや冷凍食品のプレフライは、ほとんどがパーム油中心の配合になっている。長期間店頭に並べても品質が劣化しない、油臭くならないのは、パーム油のフライ油としての優れた特性があるからだ。
 食品加工分野では、融点の高さは大きなハンデにはならないが、家庭用や業務用では、融点の高いパーム油をそのまま使うことは難しい。だから他の植物油と調合することで冬でも液状を保つような工夫が加えられている。また分別技術の深化で、ヨウ素価が高く融点が15度C以下のスーパーオレインなども生産されている。
 パーム油の高融点部分は、パームステアリンとして脂肪酸などオレオケミカルの原料として利用されている。
 2度分別した時にできる中融点部分は、チョコレート用油脂として貴重な役割を果たしている。オレイン酸の高い植物油と組み合わせることで、カカオ脂に近い脂肪酸組成を得られ、カカオ脂代替として幅広く使われている。シャープな口溶けや、日本の夏でも形を保つことができるのは、カカオ脂だけでは難しい。チョコレート用油脂を活用することでさまざまな機能を持ったチョコレートを作ることができる。
 乳脂肪の代わりに氷菓で使用される植物油も、以前はヤシ油やパーム核油が多かったが、最近はパーム油の利用が増えている。価格が安く、また安定していることがプラスになっている。

     わが国のパーム油輸入量推移
                 (単位:トン)
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  パーム粗油 精製パーム油  パームステアリン  合 計 
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2000  21,328   316,763      35,261     373,352 
2001  22,391   339,561      31,514     393,466 
2002  26,166   359,507      29,629     415,302 
2003  17,945   373,260      36,564     427,769 
2004  25,565   410,495      29,922     465,982 
2005  25,021   429,970      23,988     478,979 
2006  27,608   447,294      24,023     498,925 
2007  26,755   482,740      22,714     532,209 
2008  24,845   492,462      29,137     546,444 
2009  22,553   501,767      27,096     551,416 
2010  18,339   525,082      26,022     569,443 
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(資料:財務省「日本貿易統計」)            
注)「精製パーム油」にはパームオレインも含む。