綿実油
posted on : 2011.08.28
原料の綿実は、中国やインド、米国、パキスタンなど世界で約4,400万トン生産されている。
わが国では、品質が優れている豪州や米国から種子や原油を輸入している。なお、両国産の綿実の油分は平均18~20%である。
豪州は、この数年しばしば異常気象に悩まされていたが、生産量は回復傾向をみせており、2010/11年の生産量は約127万トンだった。米国も作付面積が減少していたが、綿花の相場高騰により、作付面積が拡大しており、生産量は553万トンに達している。一時期の需給のタイト感は、遠のいているようだ。
綿実油は、上質でまろやかな風味が特長で、また酸価安定性に優れており、「サラダ油の王様」とも呼ばれる最高級のオイルである。
用途としては、業務用が中心である。高級天ぷら店や一流の料亭、レストランなどで利用されるほか、手延素麺、マヨネーズ、オイルサーディン、ツナ缶、マーガリン、ショートニング、ドーナツなどに採用され、ユーザーのこだわりのニーズに応えている。
2010年は、生産量4,256トン、油の輸入量3,642トン、合計7,898トンに達しており、近年は8,000~1万トンの市場規模があると推察される。
業務用では、大豆油やナタネ油と価格差が開いたことから、豆・種油にシフトする動きもみられる。製油メーカーでは、綿実油と他の植物油(コーン油など)をブレンドした商品を紹介するなどして、需要を維持させていく考え。
なお、手延素麺には、生地を寝かせる際や干す時に麺同士の不着や乾燥を防ぐために使用されている。綿実油が良いのは小麦粉と綿実油の相性が良いためである。
家庭用では、オリーブ油やゴマ油、健康オイルに比べると量は少ないものの、最近では、大手百貨店の家庭用ギフト商品にもすっかり定着している。綿実油メーカーでは、家庭用の市場の開拓に力を入れており、テレビコマーシャルやラジオコマーシャルなどを通して普及を図っている。
綿実油のウィンタリング過程で発生する綿実ステアリンは、加工油脂やドーナツオイルなどに利用されており、近年は低トランスとしての需要の引き合いが強くなっている。
わが国における綿実油の歴史は古く、1600年代前半(江戸時代初期)まで遡る。
当時の綿実油は、精製技術がないため赤黒く濁り、「黒油」「赤油」と呼ばれて評判が良くなかったが、大阪の搾油業者・木津屋三右衛門が石灰を利用した、新しい精製法を確立した。この油は「白油」と呼ばれて、ナタネ油より良質な油として需要を伸ばした。
綿実油の生産量と輸入量
(単位:トン)
___________________________________________
原料処理量 油脂生産量 油脂輸入量
___________________________________________
2000 31,379 6,470 9,361
2001 30,844 6,593 7,620
2002 30,650 6,423 5,986
2003 29,785 6,167 7,765
2004 29,819 5,689 6,821
2005 30,035 6,198 6,147
2006 30,433 6,023 5,794
2007 29,532 5,813 5,702
2008 26,633 4,884 5,944
2009 21,545 4,317 2,862
2010 22,408 4,256 3,642
___________________________________________
(資料:「油糧生産実績」、「日本貿易統計」)