• 油脂のトピックス

ごま油

 ゴマの生産量は世界で約 350万トン。生産国はアジア、アフリカ、中南米の開発途上国中心で、飛び抜けた生産国はなく、数多くの国で栽培されている。その中でも世界の4大生産国とされているのが、インド、ミャンマー、中国、スーダンで、その生産量はインドが70万トン、ミャンマーと中国が60万ゴン、スーダン30万トンとされている。
 自国で消費されることが多く、輸出されるのは生産の3分の1程度で、年間 120万トン前後になっている。それでもアフリカのタンザニアやブルキナファソといった小さな国では、外貨を稼げる貴重な商品になっている。
 ゴマは大別して、食用ゴマと搾油用ゴマに分けられる。白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマは食品ゴマとして消費され、それ以外の茶ゴマやミックスゴマは搾油用として使われる。価格は食品ゴマの方が高い。
 黒ゴマの産地は少なく、中国とミャンマーが中心になる。白ゴマは中南米各国、中国、アフリカのスーダンなどが主要な生産国だ。搾油用ゴマは、食品ゴマとして消費されないゴマが中心で、世界のどの国のゴマも対象になるが、価格面でアフリカ産に集中しているのが現状だ。
 わが国の搾油ゴマはアフリカの5カ国(ナイジェリア、タンザニア、ブルキナファソ、ウガンダ、モザンビーク)からの輸入が大半を占めている。つい数年前までは、わが国のゴマ輸入量15万トンはだんとつの世界一で、世界のゴマ市場における存在感は圧倒的だった。ところが以前は輸出国だった中国(今でも黒ゴマは輸出)が数年前から輸入国に転換し、瞬く間にわが国を抜いて、年間30~40万トンのゴマを輸入するようになった。この中国の大量輸入が世界のゴマ市場をタイトにし、ゴマ価格を押し上げることになった。
 ゴマで問題になるのは、やはり農薬規制。2006年に食品衛生法の改正でポジティブリスト制度が取り入れられ、厳しい基準が設けられた。油脂原料では、ゴマがもっとも頻繁にシップバックされており、その多くはドリフト汚染と見られている。天日乾燥のゴマは汚染されやすく、また労働集約型産業の典型であるゴマ栽培は、多数の小規模農家から集荷するため、微量汚染は避けられない面もある。搾油用ゴマは前処理、洗浄することで、ゴマ油に農薬が残る可能性は少なく、また極く微量のドリフト汚染や交差汚染の場合は、洗浄して再度分析するなど柔軟な対応が求められる。
 安全は大切だが、必要以上に厳しい規制を敷くことで、食料輸入国のわが国が、結果的に輸入の幅を狭めることにならないような措置が必要だろう。ゴマでいえば、大生産地であるインドやエジブトからの輸入は、ポジティブリストに引っかかる可能性があるため、最初から輸入対象国から除かれている。
 国内のゴマ油需要は、業務用、家庭用、食品加工用にほぼ3分されている。業務用は主に天ぷら向けで、江戸前の天ぷらはゴマ油が中心になっている。純正ゴマ油が中心だが、最近のデフレ環境で、大豆油やナタネ油を混ぜた調合ゴマ油が増加している。
 家庭用のゴマ油は年間1万4,000トン、金額では 170億円とされている。ここでも圧倒的に純正ゴマ油が多いが、ここ1~2年は大手製油メーカーから調合ゴマ油の新製品が投入されたこともあり、低価格の調合ゴマ油の伸びが高くなっている。
 加工用はドレッシングや、タレ類などの用途が多いが、2010年は食べるラー油ブームでゴマ油の使用量が大きく伸びた。


わが国のゴマ輸入量とゴマ油生産量
             (単位:トン)
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    ゴマ輸入量  搾油量   ゴマ油生産量 
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2000  164,713   84,289    40,607  
2001  147,563   87,916    42,723  
2002  153,019   88,768    43,586  
2003  149,427   85,017    41,134  
2004  154,908   87,606    41,986  
2005  162,754   91,192    43,562  
2006  159,110   92,394    43,426  
2007  169,556   94,146    45,202  
2008  185,106   90,654    43,640  
2009  128,917   86,720    41,525  
2010  161,433   95,821    45,743  
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(資料:「日本貿易統計」「油糧生産実績」)