• 油脂のトピックス

サフラワー油

 サフラワー(べに花)油は、世界的にはマイナーな油脂で、さまざまな油脂関係の国際統計にも上がってこない。世界の生産量もはっきりしない。一方、わが国では非常にポピュラーで、認知度は他の植物油より高い。べに花油の名称は多くの人が馴染んでいる。
 わか国におけるサフラワー油の歴史を振り返って見ると、サフラワ-の国内搾油が始まったのは1953(昭和28)年頃とされている。リノール油脂(現在は日清オイリオグループ)と摂津製油が相前後して、サフラワーの搾油を開始している。
 大豆やナタネなどの油脂原料は輸入が割り当て制だったが、サフラワーは早い段階で自由化されたため、価格は高かったが輸入を開始した。
 その後、昭和30年代には家電製品の電気洗濯機や電気冷蔵庫が急速に普及したが、その多くは白い塗料が塗られていた。その白い塗料のアルキド樹脂の原料として、サフラワー油は重宝された。サフラワー油を混ぜることで、塗料は時間を経ても黄色く変色しなくなった。
 昭和39年には、サフラワーの原料処理量は22万986トン、サフラワー油生産量は8万1,129トンという過去最高を記録した。この大部分は塗料用として消費された。
 食用としてサフラワー油が開発されたのは、昭和34年の「リノールサラダ油」が最初だった。リノール酸(当時のサフラワー油には70%以上のリノール酸が含まれていた)がコレステロール引き下げ効果があるという研究発表が米国で行われたことから、健康に良い食用油として販売された。しかし、食用油としての販売量はそれほど伸びなかった。
 一方、白もの家電製品の塗料用油脂として成長したサフラワー油は、原料価格が高騰したことで塗料会社から敬遠され、急速に塗料需要を失うこととなった。8万トンを超えていた生産量は、12年後の昭和51年には、5,000トン近くまで減少することになった。
 再びサフラワー油が脚光を浴びるのは、「べに花油」としてで、創健社が昭和48年に発売した「べに花一番」がブームを呼び、大手製油会社も相次いでギフトセットに「べに花油」を組み入れたことで、サフラワー油の生産量は再び成長軌道に乗った。サフラワー油のJAS格付け数量(主に食用)は、昭和47年に119トンだったのが、昭和61年に1万119トンに、そしてピークとなった平成6(1994)年には6万5,020トンとなった。
 その後ギフト市場そのものの縮小もあって、サフラワー油の需要は減少し、平成22年のJAS格付け数量は1万2,091トンになっている。また、需要減少を受けて、国内搾油は2003年でストップし、以降は全量輸入のみとなった。
 そして、サフラワー油も品種改良が進み、1990年代後半から高リノール酸品種から高オレイン酸品種に置き換えられ、現在では、リノール酸を多く含んだ品種は特定用途に限定されている。

サフラワー油の生産量と輸入量
            (単位:トン)
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  原料処理量  油脂生産量  油脂輸入量 
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2000 38,091     15,299     19,421  
2001 32,077     13,001     19,743  
2002 16,192     6,778     19,156  
2003 10,559     4,379     14,493  
2004   ー       ー     13,256  
2005   ー       ー      15,051  
2006   ー       ー      13,639  
2007   ー       ー     14,021  
2008   ー       ー     14,733  
2009   ー       ー     12,124  
2010   ー       ー     13,614  
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(資料:「油糧生産実績」、「日本貿易統計」)
注)2003年で国内搾油は休止。