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食品産業センターが報道関係者連絡懇談会を開催

 食品産業センターは7月23日、東京・有楽町の糖業会館において報道関係者連絡懇談会を開催し、食品産業の直面する諸課題や同センターの取り組み等について紹介した。
 西藤久三理事長は「大災害、国際需給、政策の見直し、安全問題、環境問題等、大きな課題が食品産業をめぐる状況として継続している。その中で、食品産業の状況を関係者に連絡するとともに、行政の方向性について現場への浸透に努めていきたい」と語った。
 最近の食品産業の直面する諸課題として西藤理事長は、1)東日本大震災および原子力発電所事故への対応、農産物の国際価格の高騰等への対応、3)国内食品市場の成熟化と国内農業・食品企業の成長戦略、4)TPP、EPA/FTAの推進、5)食品の安全と消費者の信頼の確保、6)食品産業をめぐる環境問題への取り組みなどを挙げた。
 特に、東日本大震災・原発事故への対応については、「平成23年度補正予算および24年度当初予算で約18兆円の復興予算が計上されている。特区制度が創設され、復興庁の設立からは5カ月が経過した。7月13日には、福島復興再生基本方針が閣議決定されており、まさに本格的な復興の時期だと思っている。その中で、食品中の放射性物質の新たな基準値への移行が食品業界にとって非常に大きな課題だ。4月1日から新基準値に移行したが、諸外国との比較や内部被爆の実態から見て大変厳しい基準値になっている」との見解を示した。体系的な検査の実施や情報公表と、政府をあげたリスクコミュニケーションに期待したいところだ。ただ、平成23年度の食料品輸出は、前年比11.6%減の3,590億円にとどまった。「リーマンショック以降、若干マイナス傾向だったのが、22年度に10%を超えるプラスになり本格的な回復といわれていたが、残念ながら23年度はかなり大きなダメージを受けた。国別では中国向けが前年からほぼ半減し、今年度に入って前年を上回っているが一昨年に比べれば低水準で推移している。当センターだけでできる話は限られており、政府全体での取り組みをお願いしている」という。
 また、農産物の国際価格の高騰については「近年、世界の穀物の生産・消費とも大きくなっている。2012年は生産が消費を下回る見通しだ。米国の大干ばつの影響で生産が著しく低下する見通しで、大豆とトウモロコシ相場は、連日最高値を更新する状況だ」と直近のシカゴ相場の高騰に懸念を示した。輸入物価指数(2010年=100)を見ると、2011年は111.2で、直近の6月は110.6となっており、ほぼ横ばいだが、相場高騰を受け7月以降に大きく上昇すると予想される。一方、国内企業物価指数は2011年が102.6に対し、直近6月も102.6でタバコを除けば2年前からほぼ横ばいというのが実態だ。「原料は1割上がって製品価格はほぼ横ばいという大変厳しい状況にある。消費者物価もデフレ傾向で推移している」という。
 TPPやFTA/EPAなどの先行きは不透明であるが「食品業界としては、原料と製品の国境措置の整合性の確保が基本的に重要だ。例えば、小麦、乳製品、砂糖など一次産品の国境措置が維持され、製品関税は撤廃される(というような整合性が確保されない)場合は、国内の食品産業は生産継続ができなくなる。ということは、同時に、国内の農林漁業の3分の2は食品産業を通じて消費者に提供される現状にあって、食品産業が存続できなければ様々な影響が出るだろう」と危機感を示した。

 食品の安全と消費者の信頼の確保に向けては、特に消費者庁が進める食品表示一元化の動きが注目されている。食品表示一元化検討委員会による検討をめぐって「事業者寄りの意見が強く、消費者視点から見て問題だ」と指摘する向きがあるが、16名の委員のうち事業関係者は少なく、「そういう議論にはとてもならない」のが実態だ。逆に、3月に行われた同検討会の中間論点整理に関する意見交換会では、23団体のうち6つの登録住所が同じだったり、「消費者の意見というかたちで出てくるのだが、どうも特定の偏った意見が出てくることを危惧している」と不満感を示した。
 消費者庁が昨年末に消費者に実施した食品表示に関するアンケート調査では、原料原産地を参考にする理由(複数回答)で多かったのは「安全性を確かめるため」(61.0%)や「安心感の得られる商品を選ぶため」(50.4%)だった。原料原産地表示において議論されてきた「品質を確認するため」は(31.7%)にとどまった。「原産地がどこかというのは、安全問題と直接の関係はないと思うが、実態はこういうかたちだ」と西藤理事長。さらに、同調査では、「表示項目を絞り、文字を大きくする」と答えた人が72.6%を占め、「小さい文字でも多くの情報を載せる」の27.4%を大きく上回った。西藤理事長は「高齢化や少世帯化が進む中で、商品の小型化、他方で情報技術の進歩があり、わかりやすさや国際基準との整合性、実行可能性に配慮した慎重な議論を期待したい」と語った。